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竹林軒出張所

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『自衛隊と憲法 日米の攻防』(ドキュメンタリー)

自衛隊と憲法 日米の攻防(2013年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

改憲の論議を歴史の視点から見る

『自衛隊と憲法 日米の攻防』(ドキュメンタリー)_b0189364_950348.jpg 「泥棒が憲法改正の論議をしてる コソ泥が選挙制度改革で揉めてる」と歌ったのは、今は亡き忌野清志郎(「善良な市民」、『GOOD BYE EMI』に収録)。このアルバムが発売されたのは1993年だが、2013年の今でも相も変わらず同じことが行われている。だが今度は、いよいよかという雰囲気が漂っている。
 改憲(この場合第9条の改訂を指す)があの首相の悲願のようではあるが、ただ首相になった男が願っているからと言って簡単にことが進まないのが日本の政治。実質官僚が取り仕切っているためか日本の政治には機動力がない。だがある意味ではこれは良いことでもある。機動力がないために侵略戦争に加担せずに済んだ(または消極的に加担した)こともあったし、外交関係もまあ大体安定している。終戦からこっち、比較的急いで行われた政治家主導の改革は、ほぼ100%失敗していると言って良いだろう。そう考えると、実行力のある政治家なんかいらないのだ、日本の政治にとって。
 改憲勢力というのは何十年も前からあって、今まで話題にはなってもさすがにそこまで切り込む政治家もいないし、行政の側でも改憲する必然性がなかったせいか、あまり話が進まなかった。特に1989年の冷戦終結までは、世界のパワーバランスというものがあって、改憲して軍備増強することに必然性がなかったのも大きな理由であった(らしい、この番組によると)。それが大きく変わったのが、1991年の湾岸戦争で、このとき多国籍軍に加わるようアメリカから圧力があったのは記憶に新しい。また先のイラク侵略戦争でも、同じような圧力がアメリカからあって、そのたびに日本は憲法を盾にして協力を惜しんできたのだった。
 この番組では、1990年以降の日米関係に焦点を当てて、現在なぜ改憲の流れが進んでいるか、その理由を明らかにする。70年前に日本の武装解除を求めたアメリカは、現在では米軍に協力できる軍事力を日本に期待している。だが湾岸戦争当時、海部元首相や後藤田元官房長官らは、アメリカの参戦要求を退け、そのときに日本国憲法が大きな役割を果たしたのも事実だ。もちろん彼らに参戦の意志がなかったというということも大きかっただろう。彼らは戦争を膚で知っている世代で、武装に対しては明確に反対の意志を持っていたという(海部氏がこの番組のインタビューで答えていた)。今の二世首相は戦後世代で、こういうことも改憲の意志に関係しているんだろうと思われる。
 おそらく憲法第9条を変えて武装できるようにしたところで、日本国および日本国民にとって、虚栄心を満たせるという以上のメリットはほとんどないだろうと思う。結局得するのはアメリカだけである。またしてもアメリカにいいように丸め込まれる日本国という図式が現れるが、80年代の日米貿易摩擦の頃を思い出すのは僕だけか。日本もいつまでもアメリカに依存せず、そろそろ独立心を持って行動することが大事ではないかと思う。アメリカがとんでもない方向に進んでいるのに、それについていくのが懸命かどうか、政治に関係する人々にもいい加減気付いてほしいものだ。そういうことを考えたドキュメンタリーだった。
 こういう時期にこういうコンセプトの番組を放送したNHKもアッパレ、アッパレ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『今日のつぶやき・プラスα』
by chikurinken | 2013-08-18 09:50 | ドキュメンタリー
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