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竹林軒出張所

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『八甲田山』(映画)

八甲田山(1977年・橋本プロ、東宝)
監督:森谷司郎
原作:新田次郎
脚本:橋本忍
撮影:木村大作
音楽:芥川也寸志
出演:高倉健、北大路欣也、三國連太郎、加山雄三、前田吟、緒形拳、栗原小巻、加賀まりこ、秋吉久美子

夏向きのオールスター映画

b0189364_825094.jpg 1902年の八甲田山雪中行軍遭難事件に材を取った新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』が原作の映画。脚本家、橋本忍の橋本プロと東宝が製作した作品で、プロデューサーには橋本忍の他、野村芳太郎も名前を連ねている。
 公開当時、この映画のCMが頻繁に流されたこともあって、CMで流れた「天は我々を見放した」というセリフが流行語になったことは記憶に新しい。当時この映画が結構話題になったこともあり、話題先行の映画という印象が強かったが、脚本が橋本忍であるせいか評価もそこそこ高かったようだ(興収は1977年の邦画の中で1位だった)。
 内容はというと、金がかかったオールスター・キャスト映画というような印象で、とりたててどうということもない。演出はきわめて正攻法、キャストの演技も正攻法、音楽の使い方も正攻法……というかどれも古臭い使い方であまり新鮮味はない。音楽担当は芥川也寸志だが、随所で挿入される音楽は大時代的でなんだかあまり洗練されていない。この頃の映画は、とにかくこういった類の「正攻法」な映画が多く、全体的にすべてが歌舞伎みたいに大げさかつ様式的で、あまり特筆すべきことがないものも多い。この映画も実際のところなんてことはないんだが、ロケを実際に八甲田山でやったということだし、ロケが過酷だっただろうことも画面を通じて伝わってくる。また、軍に対する批判精神もよく発揮されていて、メッセージ性も強い。この映画では、軍の上層部が八甲田山の行軍を軽い気持ちで発案し、結果的に多くの犠牲者を出してしまったという描かれ方をしている。原作の小説は結構虚構が混ざっているらしいのでどこまでが事実だか分からないが、いずれにしても職業軍人が力を持っている世の中が息苦しくなるというのは容易に想像が付く。国防軍などというものを作りたがっている人もいるが、結局のところ、最終的には一般人に窮屈な思いをさせる存在になってしまうだけなんじゃないかと思う。自衛隊を日陰の存在じゃなく正式なものにしたいってんだったら、むしろ「災害救助隊」という名前を与えてフル活用したらどうだと思うが、それはまあこの映画には関係ない。
 映画自体は、前に紹介したオールスター映画、『二百三高地』なんかと似たような雰囲気で、特に感動を呼び起こすというものでもない。雪中行軍のシーンがかなり続くので、寒い真冬に見るのはあまりお奨めできない。今回見たのは暑い盛りで、暑気払いに持ってこいの映画だった(と言うほどでもないが)。
 なお、『劔岳 点の記』で監督を務めた木村大作は、この映画で撮影監督を務めており、この映画の過酷なロケを自分の映画でも再現したかったらしく、結果的に『劔岳 点の記』の撮影も過酷を極めたらしい。木村大作を殺してやりたいと思ったキャストもいたらしい。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『二百三高地(映画)』
竹林軒出張所『劔岳 点の記(映画)』
竹林軒出張所『小説吉田学校(映画)』

by chikurinken | 2013-08-07 08:26 | 映画
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