男はつらいよ(テレビドラマ版)(1968年・フジテレビ)
演出:小林俊一
脚本:山田洋次
出演:渥美清、長山藍子、東野英治郎、佐藤オリエ、森川信、杉山とく子、佐藤蛾次郎、井川比佐志、横内正、津坂匡
寅は蛇に噛まれて死んだ 『男はつらいよ』シリーズが元々テレビ・ドラマだったことは割に有名だと思う。元々は1968年にフジテレビで放送された26回シリーズのドラマである。第1回と最終回(第26回)の映像が奇跡的に残されていたということで数年前にDVD化された(第2回から第25回はないようだ)。今回チャンスがあってこの「幻」のドラマを見ることができた。
ストーリーや設定はおおむね映画版と同じだが、さくらが長山藍子、おばちゃんが杉山とく子というふうにキャスティングが若干違っている。ストーリーはおそらく映画版の『男はつらいよ』(第1作)と同じではないかと思う。テキヤ稼業の寅次郎が、すでに亡い両親の墓参りのために葛飾柴又の叔父の家を訪ね、そこで十何年も離ればなれになっていた唯一の肉親、さくらに出会うというもの。さくらには縁談があり、このフーテンの兄貴がそれを(結果的に)かき回すことになるという話になる(と思う)。マドンナの美人に惚れてしまって最後に振られるというのもまた同じ。ちなみにマドンナは
『若者たち』の佐藤オリエである。
ストーリーやプロットは非常にしっかりしていて、当時のテレビ・ドラマとしては相当質が高い部類に入る。ただ最終回の後半部分で、寅さんの最期が回想形式で語られるんだが、このシーンがちょっと冴えない。そうそう、「最期」とネタをばらしてしまったが、実はテレビ版では、寅さんは最後にハブに噛まれて死んでしまうのだ。で、番組終了後、そのことでフジテレビに抗議が殺到して、結果的に映画版が作られることになったそうな。ドラマの内容でテレビ局に抗議する暇人が当時からいたんだなと感心するが、裏を返してみればこのドラマ自体、それなりの人気を集めていたということなんだろう。
なお、渥美清、東野英治郎、佐藤オリエは『渥美清の泣いてたまるか その一言が言えない』(以下のかつてのブログ記事を参照)以来の共演。「3人が連続で共演」というのも珍しいと思うが、この3人に何か特別な関係があるんだろうか。ちなみにこの3人、1969年の映画版の『続・男はつらいよ』でも共演している(こちらは、登場人物の設定がこのテレビ版と同じようだ)。
★★★☆参考
竹林軒出張所『男はつらいよ 純情篇(映画)』竹林軒出張所『若者たち(映画)』竹林軒出張所『乙姫先生(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 ぼくの椿姫(ドラマ)』 --------------------------
(2005年12月16日のかつてのブログの記事より)
渥美清の泣いてたまるか その一言が言えない(1966年・TBS)
監督:中川晴之助
脚本:橋本忍
出演:渥美清、佐藤オリエ、松本克平、永井智雄、東野英治郎
1話完結のドラマ、『渥美清の泣いてたまるか』の第23回で、橋本忍が脚本を書いたもの。橋本忍得意の法廷劇。
元警官のタクシー運転手が、ヤクザに絡まれドスで脅されて、もめているうちに逆に刺して死なせてしまうというストーリー。周囲の警察、検察、弁護士は、皆口々に正当防衛を主張するが、殺意があったことを当人だけが訴える。
法廷劇でスリリングなところもあるが、最後までなんだかはっきりしないドラマだった。面白いことは面白い。佐藤オリエが若くて可愛い。
★★★☆