ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『石ノ森章太郎WORLD 青年萬画編』(本)

『石ノ森章太郎WORLD 青年萬画編』(本)_b0189364_8343498.jpg石ノ森章太郎WORLD 青年萬画編
石ノ森章太郎著、すがやみつる監修
ゴマブックス

ストレスがたまる本

 石ノ森章太郎の青年向けマンガを集めた本。収録されているのは、『佐武と市捕物控』、『HOTEL』、『おみやさん』、『さんだらぼっち』、『化粧師』、『風のように…』などで、ほとんどは「石森」時代の作品である。収められているのはどれも1本読み切り作品で、数多く集めてはいるんだが、中には一部だけ(途中から、途中まで)しか入っていないものもあり、編集者の良識を疑ってしまう。ラインアップは青年向けということでエロ的な要素もところどころ入れられている。著者のサービス精神(または商業主義的志向)の現れとも言える。
 今回この本を読んだのは『風のように…』が目的だった。先日NHK-BSで放送された『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記』(竹林軒出張所『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記(ドキュメンタリー)』参照)で、手塚治虫が石森章太郎の『ジュン』を(おそらく嫉妬のため)批判し、その後石森のところに謝りに行ったというエピソードが紹介されていたが、そのエピソードがこの『風のように…』で描かれているというので、読んでみたくなって図書館で借りたというわけ。ところが、この『風のように…』も途中から収録されていて、肝心のシーン(手塚が石森の仕事場に謝りに行く場面)が載っていなかった。
 『佐武と市捕物控』などは、『ジュン』で試みた実験的な手法を多数取り入れているのがわかり、それはそれで面白い要素は多かったが、一部だけ収録してもOKとする編集方針にはやはり反感を感じる。石森作品についてはどれもデキは割と良いが、ストーリーがどこか予定調和的であまりに単純な点が好きになれなかった(絵はうまいと思うが)。テレビシリーズ化されている『おみやさん』が石森作品だというのは今回初めて知った。
 なかなか読めない石森作品も収録されていてその点では評価できるが、それにしても一部収録はないだろと思う。いずれにしてもストレスがたまる本である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2013-07-24 08:34 |
<< 『模倣品社会 命を脅かすコピー... 手塚・石森アニメ/特撮ドラマ回顧 >>