手塚治虫、石森章太郎といえば、我々世代にとっては非常に愛着のある存在。かれらのマンガはもちろん、かれらが原作のアニメも同時代の子どもとして折に触れて接触してきている。昨日も紹介したが(
竹林軒出張所『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記(ドキュメンタリー)』参照)、その手塚治虫、石森章太郎の特集が今月NHK-BSで組まれていて、彼らが原作のアニメ/特撮ドラマも大量に放送された(他にかれらをモデルにしたドキュメンタリードラマも放送)。
アニメ/特撮ドラマはどれも初回と最終回をセットで放送するというもので、放送されたアニメ/特撮ドラマのラインアップは、手塚治虫作品が『マグマ大使』、『鉄腕アトム(アニメ第1作)』、『ブラック・ジャック』、『ビッグX』、『ミクロイドS』、『ジャングル大帝』、『リボンの騎士』。石森章太郎作品が『仮面ライダー』、『がんばれ!! ロボコン』、
『変身忍者 嵐』、『さるとびエッちゃん』、『人造人間キカイダー』、『サイボーグ009(アニメ第1作)』、『秘密戦隊ゴレンジャー』というもの。
同時代で見たものもあるが、『ロボコン』や『ゴレンジャー』は初放送時すでにこっちもそこそこ年長になっていたため、面白いと感じたことはない。大体このころの石森章太郎は、子ども心に商業主義的な匂いがして、しかも内容自体ちょっとお粗末だったこともあってあまり思い入れはない。しかもその後、『マンガ日本経済入門』を出すに至って、いかにもコビコビの商業主義というイメージを持ってしまったため、手塚治虫と違って、石森氏に対してはあまり良い印象はない。それに『マンガ日本経済入門』の頃、名前を石森から石ノ森に改名したのもなんだか良い気分はしなかった。そのため、石ノ森章太郎という呼び方はいまだに違和感がある。僕の中では石ノ森章太郎は「石森章太郎」ではないのだ。

さて、放送された番組だが、初回と最終回をセットにするというのはなかなか面白い企画で、その作品を俯瞰するにはもってこいと言えるかもしれない。『マグマ大使』は最終回を見るのは40年ぶりくらいでなかなか新鮮だったんだが、正直言って設定もいい加減だし映像が実にチャチな感じがした。『マグマ大使』は、初放送時に見たときは、もうとにかくゴアが怖くて、アニメを混ぜた演出や、マグマ大使の頭の位置からの俯瞰撮影、ロケットからマグマ大使に変身する特撮シーンなんかも非常に斬新さを感じたが、怪獣とヒーローの格闘シーンについては、今見るとやはり円谷プロに一日の長があると見た。それにマグマ大使の着ぐるみがボロボロだったのももの悲しさがある。

『変身忍者 嵐』と『人造人間キカイダー』についても設定のいい加減さとチャチさを感じた。当時の特撮モノは全体的にこういう水準だったのかも知れない。『変身忍者 嵐』は、小学生だった当時は「面白い!」と思って見ていたんだが、今見るととてもご都合主義的で、しかもディテールがしっかり描かれていないので、大人が見るにはちょっと苦しい。「素敵なラブリーボーイ」の林寛子が子役で出ていたのは当時まったく知らなかったので、今回ちょっとした驚きだった。そう言えば林寛子が歌手で出てきたときどこかで見た顔だと思ったような記憶はある。それから『仮面ライダー』で地獄大使を演じた潮健児が、おっちょこちょいのイタチ小僧として登場したのも新鮮な驚きだった。他にも『仮面の忍者赤影』の白影、牧冬吉が『赤影』と同じような役回りで出てきたりするので、キャスティングは今見ると非常に面白い。
『ミクロイドS』も今回が35年ぶりぐらいで、当時も感じていたが、作りが非常に雑である。セル数が非常に少なく絵があまり動かない上、プロットもいい加減で、それに絵だって原作の絵と全然違うし、悪いアニメ化の実例みたいな作品だった。『ゴレンジャー』も『ロボコン』もずさん。やはり当時子ども向け番組が非常に多かったせいか、「質より量」とか「こんなもんでよかろう」というような風潮がそれぞれの放送局にあったのかも知れない。

例外と言えるのが『ジャングル大帝』で、冒頭のタイトルバックの表現は手がかかっていてしかも芸術性が高い。しかも音楽は冨田勲と来ている。虫プロ作品であることから、手塚治虫が関わっていたのかしらんが、今の水準から見ても非常にレベルは高い。今回はタイトルしか見ていないので、内容はどうだかわからないが、タイトルだけで非常に感心したので、ここに記しておこうと思う。
いずれにしてもこういう企画はなかなか楽しいもので、手塚、石森作品以外にもこれからどんどん放送していってほしいと思う。次はスポ根ものあたりになるのかなと勝手に思ったりもしている。『タイガーマスク』の最終回はすごかったけど、NHKでは放送できないかな……などと一方的に考えたりする。やはり60〜70年代のアニメ、特撮ドラマは我々世代の琴線に触れてくるものなんである。
参考:
竹林軒出張所『手塚×石ノ森 ニッポンマンガ創世記(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『変身忍者 嵐 (1)、(2)(ドラマ)』