『サーカス』（映画）

サーカス（1928年・米）
監督：チャールズ・チャップリン
脚本：チャールズ・チャップリン
音楽：チャールズ・チャップリン
出演：チャールズ・チャップリン、マーナ・ケネディ、ハリー・クロッカー、アラン・ガルシア

知名度は高くないが
完成度は高い快作

ネタバレ注意！
　この映画もチャップリン中期の傑作で、製作されたのは『黄金狂時代』と『街の灯』の間になる。この頃のチャップリン作品は、きわめて完成度が高く、しかも笑いの要素を次々に繰り出して、見るたびに作り手の才能を感じさせられるようなものが多い。この『サーカス』は『黄金狂時代』や『街の灯』ほど知名度は高くないが、完成度では決してひけをとらない傑作である。それに『黄金狂時代』で見られるようなこざかしさもない。
　例によって浮浪者のチャーリーが官憲に追いかけられてサーカス団に紛れ込んでしまうというありがちなストーリーだが、次から次に繰り出されるギャグの質が予想を遙かに超える超弩級のものばかりで、笑うと同時に感心することしきり。あげくにチャップリンがアクロバティックなものまで難なく繰り広げるに至っては、もう度肝を抜かれてしまう。そしてホロッとさせる部分もあり、当時のチャップリンの人間不信が現れているような展開も見事。寅さんの原形とも言えるストーリーだが、心に残る悲しみが一通りでない。非常によくできたストーリーである。チャップリン喜劇の（黄金狂時代ならぬ）黄金時代の1本で、これも古典というにふさわしい作品である。
★★★★

参考：
竹林軒出張所『チャップリン自伝 ― 若き日々（本）』
竹林軒出張所『チャップリン自伝〈下〉栄光の日々（本）』
竹林軒出張所『モダン・タイムス（映画）』
竹林軒出張所『チャップリンの黄金狂時代（映画）』
竹林軒出張所『キッド（映画）』
竹林軒出張所『ニューヨークの王様（映画）』
竹林軒出張所『街の灯（映画）』
竹林軒出張所『殺人狂時代（映画）』
竹林軒出張所『チャップリンの声なき抵抗（ドキュメンタリー）』