殺人狂時代
(1947年・米)
監督:チャールズ・チャップリン
原作:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
音楽:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン、マーシャ・レイ、マリリン・ナッシュ、イソベル・エルソム、アーヴィング・ベーコン
ブラック・ユーモアと皮肉に満ち満ちた一本
20世紀初頭にフランスで実際に起こった青髭ランドリューの事件を基にした映画。元々はオーソン・ウェルズがチャップリンの元に持ってきた話だということで、ただ当時脚本も何もできておらず、ランドリューの記録映画を作るという企画だけだったのだが、結局チャップリンがこの話を映画化することになった。その際、チャップリンはウェルズ側に5000ドルを支払うことで折り合ったが、ウェルズは、映画ができたら原案として自分の名前をクレジットするよう主張し、結局完成作にはオーソン・ウェルズの名前が出ることになった。チャップリン側からすると、実際に起こった事件を基にしたわけで、オーソン・ウェルズにはこの映画について何の権利も生じようがないということだったんだが、約束してしまったのでしようがなかったということらしい。
そういうわけで、この映画は、ランドリュー同様、ビジネスとして結婚詐欺・殺人を繰り返す男が主人公で、その主人公アンリ・ヴェルドゥをチャップリン自身が演じている。全編、身勝手な殺人がモチーフになっているため、見ていてあまり良い気持ちがしない場面も多いが、強烈なメッセージが発せられて、いかにも後期のチャップリン映画といった作品である。
チャップリン映画の中では異色な部類で、笑える要素が比較的少ないこともあり興行的には失敗だったらしい。カトリック関係団体をはじめとする各種団体から上映中止圧力が加わったりしたことも大きかったようだ。チャップリンがアメリカの当局から圧力を受け始めるのもこの映画の時期とちょうど重なり、チャップリン自身、この作品の興行的な不成功もあって、この後しばらくの間失意の時代を送ることになったという。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『チャップリン自伝 ― 若き日々(本)』竹林軒出張所『チャップリン自伝〈下〉栄光の日々(本)』竹林軒出張所『モダン・タイムス(映画)』竹林軒出張所『チャップリンの黄金狂時代(映画)』竹林軒出張所『キッド(映画)』竹林軒出張所『ニューヨークの王様(映画)』竹林軒出張所『街の灯(映画)』竹林軒出張所『サーカス(映画)』竹林軒出張所『チャップリン対FBI(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『チャップリンの声なき抵抗(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ビギナーズ・クラシックス 墨子(本)』