街の灯
(1931年・米)
監督:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
音楽:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン、ヴァージニア・チェリル、フローレンス・リー、ハリー・マイアーズ
笑って泣ける、チャップリン中期の快作
チャップリン中期の長編映画。すでにトーキー時代であるにもかかわらずサイレントに固執し、サイレント映画でありながらちゃんと音楽や効果音は入っており、厳密にはサイレント仕立てのトーキー映画である。サイレントにこだわったのは、
『チャップリン自伝(下)』によると、トーキーへの違和感とパントマイムの面白さが失われることへの危惧から来ているらしいが、それが十分理解できるほど、この『街の灯』はグレードが高い。方々に散りばめられた笑いも実にセンスが良く、それに何より、それ以前の作品に比べると、ストーリーとしての一貫性があって、展開が自然である。そして最後に泣かせるという、映画の教科書のような映画である。
笑いのシーンの中でもボクシングのシーンはダントツで、最初見たときは我を忘れて笑い転げてしまった。ちなみに見るのは今回で4回目くらい。ストーリーだけでなく、それぞれのシーンでも見所が多く、花売り娘のヴァージニア・チェリルが好演していて、シーンを大いに盛り上げている。ちなみにこの盲目の花売り娘役であるが、なかなか適任の女優が見つからず、キャスティングの段階で随分苦労したという。どの女優も盲目の表現がなかなかできず、たまたま直前にオーディションしたヴァージニアが実にさりげなくそれをやってのけたので大抜擢されたというのだ。これまで見たときは、盲目の演技がそんなに大変であるということにまったく気が付かなかったが、それほどヴァージニアの演技が自然で素晴らしいということである。チャップリン作曲の音楽もすばらしく、まさに彼の天才が花開いた映画と言える。
★★★★参考:
竹林軒出張所『チャップリン自伝〈下〉栄光の日々(本)』竹林軒出張所『チャップリン自伝 ― 若き日々(本)』竹林軒出張所『モダン・タイムス(映画)』竹林軒出張所『チャップリンの黄金狂時代(映画)』竹林軒出張所『キッド(映画)』竹林軒出張所『ニューヨークの王様(映画)』竹林軒出張所『殺人狂時代(映画)』竹林軒出張所『サーカス(映画)』竹林軒出張所『チャップリン対FBI(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『チャップリンの声なき抵抗(ドキュメンタリー)』