ニューヨークの王様
(1957年・英)
監督:チャールズ・チャップリン
脚本:チャールズ・チャップリン
音楽:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン、ドーン・アダムス、マイケル・チャップリン、オリヴァー・ジョンストン、マキシン・オードリー
いかれたアメリカ社会への
辛辣な皮肉が心地良い
祖国の革命のためにニューヨークに亡命したとある国の国王の喜劇。喜劇といっても、チャップリンの初期から中期にかけて見られたドタバタ喜劇ではなく、アメリカの世相に対する皮肉を効かせたニヒリスティックな「喜劇」である。
祖国では資産を差し押さえられ、外国の銀行に預けられていた資産は首相に持ち逃げされてほとんど無一文になった王様が、とあるきっかけでCM出演のバイトを始めるというような話で、あげくに(王族であるにもかかわらず)共産主義者の疑いをかけられ非米活動委員会に召還されるなど、当時のアメリカの世相を皮肉っている。実際のところチャップリン自身が赤狩りのせいでアメリカを出ることになったわけで、言ってみれば経験者である。そういうこともあってか、非常にシニカルな目線で描かれ、しかも当時のアメリカの世相まで随分厳しく皮肉っている。もちろん笑いの要素も散りばめられていて、見応えのある作品になっている。脇役の「不愉快な」少年は、チャールズ・チャップリンの息子、マイケル・チャップリンが熱演している。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『チャップリン自伝 ― 若き日々(本)』竹林軒出張所『チャップリン自伝〈下〉栄光の日々(本)』竹林軒出張所『モダン・タイムス(映画)』竹林軒出張所『チャップリンの黄金狂時代(映画)』竹林軒出張所『キッド(映画)』竹林軒出張所『街の灯(映画)』竹林軒出張所『殺人狂時代(映画)』竹林軒出張所『サーカス(映画)』竹林軒出張所『チャップリン対FBI(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『チャップリンの声なき抵抗(ドキュメンタリー)』