実録! あるこーる白書
西原理恵子、吾妻ひでお著、月乃光司協力
徳間書店
経験者たちによるアル中対談
書籍版AAまたは教育プログラム
かつてアルコール依存症だったマンガ家の吾妻ひでおと、アルコール依存症の夫による虐待に苦しんだ経験を持つ西原理恵子の対談。他に月乃光司という詩人も加わるが、本書では「協力」という扱いになっている。
それぞれが壮絶な経験談を披露し、さながらAA(アルコホーリクス・アノニマス)か断酒会かというような趣であるが、現在アルコール依存者が周りにいない者としては、比較的客観的に接することができ、「ふーん」とか「へー」とか感じるような話である。
彼らの話を総合すると、アルコール依存に陥った人は、おおむね自覚症状がなく、周囲に迷惑をかけまくり、あげくに家庭崩壊などに至ってどん底を経験した上で、自ら復活を望んだときに初めて治療の道が開ける(ただしそこに至るまでに死んでしまうことも多いらしい)ということで、薬物依存やギャンブル依存同様、明らかに病気なんだという。西原理恵子によると、アルコール依存症患者を(今の普通の扱いのように)単なるろくでなしや怠け者として扱うんではなく、病気として認識し、家族もそれを認識して対応しなければならず、それゆえに病気であるという認識を社会に持ってもらうことが重要であるという。一般的には、家族が認識不足のためにイネーブラー(アルコール依存症の進行に加担してしまう人)になってしまうことが多いとも。なるほどと感じる部分は多い。
対談であるため読みやすいが、だからと言って面白くてたまらないというほどのものでもなく、ホントにアルコール依存症患者が病院で受ける(という)教育プログラムみたいな内容だった。自分がこういった状態に陥らないようにする上で役に立つかなというような内容である。それを考えると、患者や患者予備軍、その家族のための本と言えるかも知れない。吾妻センセイも面白い話を披露してくれているが、(当然だが)やはりマンガのようなキレはなく、そういうのを期待していると少々ガッカリするかも知れない。なお本書によると、まもなく吾妻センセイの新作(『失踪日記』の続編)が出るそうだ。現在鋭意執筆中とのこと。楽しみ。
★★★参考:
竹林軒出張所『地を這う魚 ひでおの青春日記(本)』 竹林軒出張所『私、パチンコ中毒から復帰しました(本)』竹林軒出張所『飲んで死にますか やめて生きますか(本)』竹林軒出張所『酔うと化け物になる父がつらい(本)』竹林軒出張所『この世でいちばん大事な「カネ」の話(本)』竹林軒出張所『性犯罪をやめたい(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『「教えて★マーシー先生」って……』