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竹林軒出張所

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『風に吹かれてカヌー旅』(ドキュメンタリー)

風に吹かれてカヌー旅 〜野田知佑 モンゴル・ロシア1300キロをゆく〜
(2001年・NHK)
NHK-BSプレミアム プレミアム・アーカイブス

『世界の川を旅する』映像版

b0189364_8124418.jpg カヌーイスト、野田知佑の川下りの旅に同行するというドキュメンタリー。まさに野田氏の著書を映像化したような企画である(竹林軒出張所『ダム建設中止問題の実在に関する考察』参照)。
 今回の川旅の舞台はシベリアのバイカル湖に流れ込む川で、モンゴル北部にあるフブスグル湖が源流になっている。そのフブスグル湖を出発して、エグ川、セレンゲ川を経由しバイカル湖まで40日かけてゆっくり下るというはなはだ贅沢な川旅である。途中、モンゴルとロシアの国境を越える。
 出発地点はフブスグル湖畔で、そこまでは飛行機や車などで移動。当然折りたたみ式のカヌーも持参する。で、このカヌーを組み立てるところから番組は始まる。まさしく野田氏の旅に同行しているような感覚である。ちなみにこの旅、野田氏の他に、カメラマンの藤門弘も同行する。なんでも、これまでも何度も一緒に川下りをしてきたそうで、その都度(著書の)写真を担当しているらしい。たしかに野田氏の本は写真が良いものが多い。その写真を撮ったのが藤門氏なのかわからないが、ともかく気心の知れた両人である。
 やがて湖から川に入るが、例によって途中でキャンプしながら、食糧の魚を釣ったり、本を読んだり、ぼんやりしたり、あるいは現地の人々と触れあったりして、まさに野田氏の川旅が映し出される。つまり、彼の著書で紹介される川旅がそのまま繰り広げられ、見ているこちらも川旅を体感できるようになっている。また、現地の子供達をカヌーに乗せてやったり、ナーダム(モンゴルの祭り)を訪れたりという紀行ドキュメンタリー的な要素も出てくる。だが、テレビ番組的な作為的な不自然さはまったくない。こういった一つ一つがすべて野田氏主導で行われていることが窺われる。
b0189364_8134773.jpg カメラは水上あるいは陸上から2人の旅人の姿を捉え、雄大な自然もフレームに収められる。最初から最後まで彼らの旅に同行しているかのように感じられる。これこそ紀行ドキュメンタリーの醍醐味である。
 登場する野田氏であるが、不必要なことはあまり語らず、常にどっしりしていて、なんだかもう非常にかっこいい。自然人とでも言ったらいいのか、男の理想形みたいなものがそこから見えてくる。こういう部分もこのドキュメンタリーの魅力になっている。
 途中、モンゴル-ロシア国境を越えるとき、制度上、川をそのまま通過することができないために、いったん陸に上がって越境手続きをしなければならなくなる。しかもその手続きもさんざん待たされて結局9時間かかったという。川を行けばあっという間に通過できるのにこれである。人為のバカバカしさが見ているこちら側にもよく伝わってくる。一見単調な紀行ドキュメンタリーであっても、実はいろんなことを考えさせられるんだが、そういう点も野田氏の著書と共通なんである。
 川の自然も非常に美しく、ダイナミックな清流が至る所に残って入るが、途中川の中にちらほら(釣り具などの)ゴミが散見していて、野田氏がこの川の美しさもあと2、3年かなと言っていたのが非常に印象的であった。破壊し尽くされていった日本の川を川面から見続けた野田氏だけに、この言葉が非常に重く響いた。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ダムはいらない! 新・日本の川を旅する(本)』
竹林軒出張所『ダム建設中止問題の実在に関する考察』
竹林軒出張所『世界の川を旅する(本)』
by chikurinken | 2013-06-17 08:14 | ドキュメンタリー
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