カラヤン 〜ザ・セカンド・ライフ〜
(2012年・襖Servus TV)
監督:エリック・シュルツ
出演:ヘルベルト・フォン・カラヤン、ハンス・ヒルシュ、アンネ・ゾフィー・ムター
素顔のカラヤンは意外に魅力的♡
帝王と呼ばれた指揮者、ヘルベルト・フォン・カラヤンの素顔に迫るドキュメンタリー。生前のカラヤンの映像、会話記録、関係者へのインタビューで構成される。
カラヤンは、生前その派手な行動(自家用飛行機、スポーツカーなど)ばかりが報道され、彼の音楽性や人間性に迫られることは比較的少なかったように思う。一説にはカラヤン自身が自分の肖像や記事まで厳格に管理していたなどとも言われているが、真相はわからない。ともかくあれだけ有名な指揮者でありながら、彼の話は一般には噂レベルでしか伝わってこなかった。そのためもあり、頑迷かつ独裁的などと一部で言われ、その固陋さゆえ晩年は、指揮者を務めていたベルリン・フィルとももめていたなどと言われている。だが、このドキュメンタリーに登場するカラヤンは、割合普通の人間で、そういう点で意外な印象を与える。もちろん音楽には厳しそうだが、特に頑迷という印象もない。人間、カラヤンがよく捉えられていると言ってよい。
僕自身はカラヤンの音楽を全般的に高く評価しているため、日本の音楽界で広がっているカラヤン・バッシングみたいなものにはまったく同調できない。このドキュメンタリーを見ると、こういったバッシングが根拠のないものであることもわかる。また、カラヤンがなぜレコードやCDの録音に執拗にこだわっていたか、彼が何を求めていたかも明らかにされ、カラヤンの志向や芸術の一端が理解できる。
監督が、
カルロス・クライバーのドキュメンタリー、『目的地なきシュプール』を撮った人であるため(エリック・シュルツ)、演出や展開はあのドキュメンタリーと驚くほど似ている。インタビューの編集方法や話し手の表情の捉え方もまったく一緒と言ってよく、『目的地なきシュプール』の後にそのまま続けて上映されても気付かないかも知れない(もちろん素材はクライバーとカラヤンで異なるが)。そういう点であまり工夫がないとも言える。全体的には無難な線でうまくまとめ上げられているといった印象である。ただ、カラヤンの映像や会話がふんだんに出てきて、カラヤンの人間性の追求という面で奏功しており、その点、ドキュメンタリーとして高く評価できるんじゃないかと思う。
★★★☆
追記:今回僕が見たのはNHK-BSプレミアムのプレミアムシアターで放送されたものだが、DVDも出ているようで、タイトルのリンクはその(輸入盤)DVDに対するものである。内容は放送のものと同じだと思うが、もしかしたら一部違うかも知れない。その点は未確認。
参考:
竹林軒出張所『日本人とカラヤン(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『カルロス・クライバーのドキュメンタリー2本』竹林軒出張所『マエストロ・オザワ 80歳コンサート(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『アルゲリッチ 私こそ、音楽(映画)』竹林軒出張所『イツァーク(ドキュメンタリー)』