人は走るために生まれた
〜メキシコ山岳民族・驚異の持久力〜
(2011年・NHK)
NHK-BSプレミアム
『BORN TO RUN』の恰好のサブテキスト
『BORN TO RUN 走るために生まれた』を読んだ人にはたまらない、驚きのドキュメンタリー。この本によると、タラウマラ族は外の人間と接触することを極度に嫌うという。しかも彼らが棲んでいる地は、なかなか外の人間が近づけない峡谷地帯と来ている。映像はおろか、写真もなかなか見れないんじゃないかと本を読みながら感じていて、一方で記述だけでは想像しかねる部分が非常に多く、本を読んでいてそのあたりが少し悩ましい部分だったのだ。ところがその後このタラウマラ族のドキュメンタリーがあることを知り、しかも再放送予定があることを知り、僕は驚くと共に非常な興奮を覚えた。もっともその後、DVDが出ていることも知って少々興奮は冷めたのであったが。
さて、このドキュメンタリー、タイトルは『人は走るために生まれた』となっており、明らかに『BORN TO RUN 走るために生まれた』を意識したものになっている。で、番組の中でもこの本が紹介され、本に登場したタラウマラ族のスーパーランナー、アルヌルフォとシルビーノが番組の中にも登場。かれらの家や生活までカメラが捉えていた。本で紹介された「外の人間を寄せ付けない」イメージとはまるで違い、こういうドキュメンタリーにときどき登場する辺境地帯の先住民族といった程度のイメージである。撮影クルーに対しても割合フレンドリーな感じである。また彼らが住む峡谷地帯もあちこちが映像で捉えられ、本で紹介されていた場所がありありと映像で示される。こういう実際の映像に接すると、本の記述はちょっとオーバーだなと感じる。
この本のハイライトになっていたトレイルランの大会はその後も継続的に毎年開催されているらしく(Copper Canyon Ultra Marathon)、この撮影の年にアルヌルフォとシルビーノも参加して、その模様が映像に収められている。つまりあの本の記述を再現したような映像を拝むことができるんで、これは感激である。残念ながらアルヌルフォもシルビーノも思ったような結果にならず、製作者側としては残念だったかも知れないが、それでも貴重な映像である。またララパジリ(木のボールを蹴りながら長距離を走る競技)の大会の模様も収録されていて、これも非常に興味深かった。総じて『BORN TO RUN 走るために生まれた』のサブテキストとして恰好のドキュメンタリーと言える。ただ一方で、こちらのドキュメンタリーを先に見た方が具体的なイメージを伴って『BORN TO RUN』を読めたかなとも思う。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『BORN TO RUN 走るために生まれた(本)』竹林軒出張所『歩行は技術だ!(ドキュメンタリー)』