激闘! 美食のワールドカップ 〜フランス料理世界一をめざせ〜(2013年・NHK)
NHK-BSプレミアム
3位の重みがよくわかる フランスで2年に一度開催される「ボキューズ・ドール」(フランス料理のワールドカップ)の模様を伝える番組。正確にはドキュメンタリーではなくバラエティ形式になっている。いっそドキュメンタリーにしてしまえば良かったのにと思う。ドキュメンタリー映像が流れる部分で、バラエティ部分の出演者の顔が小さな窓に映し出されるが、あれがとてもうっとうしい。なんで一々あいつらの顔色を伺わなければならないのかと感じる。最近こういう演出が民放NHKを問わず散見されるが、いい加減やめたらどうだと思う。
まそれはさておき、全編ほとんどドキュメンタリー風に撮影されていて、まずこの大会のいきさつや意義、最近の入賞者に北欧勢が多いことなどが伝えられる。基本的に各国の代表が各地域の大会を勝ち抜いて、このワールドカップに駒を進めるという形式になっていて、そのあたりはサッカーのワールドカップと似ている。開催国で本家のフランスは前々回大会3位、前回大会入賞者無しというありさまで、タイトル奪還に燃えている。一方近年上位を独占している北欧勢も意気が上がる。
彼らに混ざって登場する日本人が浜田統之(はまだのりゆき)って人で、この人、大会の前に『アイアンシェフ』にも登場していて、僕には馴染みがある。ちなみに日本代表に過去メダリストは無く、最高順位が6位。今大会でのこの浜田氏の健闘や、フランス、デンマーク、ノルウェー代表の各シェフに密着し、この大会の準備の模様や、実際の大会での映像を交えて構成するのがこの番組。構成は非常にしっかりしていて、なかなか見応えがあり、見せ方もうまい。ただ、先ほども言ったように途中バラエティになって、出演者がコメントをはさんだりする。出演者ってのがフランス料理に造詣が深い人達ということで、森泉や中尾彬らが出てきて好き勝手なことを言い合う。途中クイズが出たりして、こういう演出が必要なのかはなはだ疑問である。こういった軽薄な展開にする必要が本当にあったのか、製作者にはよくよく考えていただきたいところだ。
さて、ワールドカップ3カ月前の試食会で酷評されて涙を見せたりした浜田氏だが、その後、自分の欠点を克服し、本番ではなかなかの料理を作り上げた。その際に日本の職人の手による食器やプレートを使うなど、料理を魅せることにも細心の注意を払っていた。要するにこの大会、『料理の鉄人』や『アイアンシェフ』のような料理人の腕を競う大会ではなく、料理を提供する上でのプロデュース能力など、すべてを総合したプレゼンテーション能力を評価する大会というコンセプトのようだ。そういうわけで、料理自体も数カ月前からプランを練ることができるのだ。結果的にこの浜田氏、3位に入賞し(魚料理部門では1位)、堂々銅メダルを獲得したのであった。優勝者はフランス人シェフで、彼の場合、フランスの食器メーカーの全面支援を受け、本番と同じ形式のキッチン・ブースを作り上げてシミュレーションを続けるという念の入れようである。また2位のシェフも、シェフを辞めてこの大会に備えるという気合いの入り方で、やはりそれだけの準備や支援が可能な人だけが掴める栄冠、それがこの大会ということなんだろう。こういう大会が良いか悪いかは別にして、ドキュメンタリーとして見ればなかなか面白い番組だった。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『鉄人の音楽』竹林軒出張所『ドキュメンタリー3本』「疾走するシェフ」