私、パチンコ中毒から復帰しました
本田白寿著
中公新書ラクレ
ギャンブル依存克服のための処方箋
パチンコ依存のために多額の借金をこしらえ妻とも離縁してしまった著者が、パチンコ依存から脱却し、まともな生活を送るようになったいきさつを率直に綴る本。同時に、自らの経験を基にして、パチンコ依存から脱却するためのわかりやすい処方箋を紹介する。
僕自身は、ギャンブル依存ではまったくないが、ギャンブル依存について、特にパチンコ依存については非常に関心を持っている。だからこういう本を図書館で見つけるとつい借りてしまう。過去、依存症関連の本を集中的に読んだ時期があって、そのレビューも前のブログで書いていたため、今回あわせて紹介しようと思うが、本当にギャンブル依存に苦しんでいる当人にとって、この本がもっとも有用だと思う。経験に基づいて書かれているため何よりも非常に具体的で、陥りやすい失敗やそれを回避する方法まで具体的に記述している。
著者によると、世間で言われているようにパチンコ依存(著者はあえて「パチンコ中毒」と呼んでいるが)を「病気」であるとして扱うのはさまざまな点で問題があるという。パチンコ依存はあくまでも本人の問題であり、依存から脱却するという本人の確固たる決意がなければ始まらないという。そしてその決意に基づいて、当面の間一切パチンコ関連情報を意図的に断つようにすることが脱却のための第一歩であると確信を持って語る。パチンコ依存の脱却の過程をさまざまな比喩を用いて描写しているのも、具体性に拍車がかかっていてわかりやすい。またSNSやギャンブルアノニマスのようなコミュニティに参加することの利点や注意点も非常に具体的に書かれている。
パチンコ依存者の家族に対してのメッセージもあるが、残念なのは、基本的に家族が何をしても効果が無いという点である。とにかく本人がみずからの意志で、自分の生活が破滅に向かっていることを自覚し、取り組み始めることが第一であって、本人に説教したり誓約書を書かせたりしてもまったく意味がないと断言している。だが家族が借金を肩代わりしないとか、場合によっては離縁も考えるべきだとか、具体的な対策は書かれているので、処方箋として意義があると思う。
何度も言うが記述が非常に具体的で、なおかつなかなか気が付かないような詳細な部分まで踏み込んでいるため、ギャンブル依存で苦しんでおりなんとか生活を変えたいと考えている人にとってはまさに福音になる本ではないかと思う。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『失踪日記2 アル中病棟(本)』竹林軒出張所『実録! あるこーる白書(本)』竹林軒出張所『飲んで死にますか やめて生きますか(本)』竹林軒出張所『スマホ依存から脳を守る(本)』竹林軒出張所『性犯罪をやめたい(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『「教えて★マーシー先生」って……』 --------------------------
以下、以前のブログで取り上げたギャンブル依存症関連の本。
(2005年1月23日の記事より)
ギャンブル依存とたたかう
帚木蓬生著
新潮選書
パチンコなどのギャンブルにはまり多額の債務や家族崩壊を招く人々のことを、ギャンブル依存症という病気であると断定する。そのため、家族や親戚で追求したり「もう二度としない」という誓約書を書かせたりする(一般によく行われるらしい)だけでは治らない。アルコール依存症と同じような方法で治療し、再び悪循環にはまらないよう本人が管理しなければ絶対に改善されない、ということを終始一貫して述べている。症例もわずかではあるが紹介されており、非常にわかりやすい。また、治療の方法も具体的に紹介されている。
一方で、精神科医の立場から、ギャンブルは行政の手で厳正に管理されなければならないと説く。特に、依存度が高い(あきらかに)ギャンブルであるパチンコが、ギャンブルでないものとして野放しになっている現状について告発する。現場の立場で書かれた好著である。
こういう本が読みたかった。先に紹介した『ギャンブルフィーヴァー』 とは好対照の内容だ。
★★★☆ --------------------------
(2004年8月25日の記事より)
ギャンブルフィーヴァー
依存症と合法化論争
谷岡一郎著
中公新書
ギャンブル依存症の実態を追求する本と思って読んだのだが、依存症のことよりも合法化論争に重きを置いている。
ギャンブルはレジャーとして公認すべきで、公認することで収支が明朗になり、地下に潜って地下組織の資金源になることも避けられるというのが、著者の主張。また、現在の日本の公営ギャンブルの極めて高い控除率(テラ銭)も、競争のない寡占状態から生み出されたのであるから、ギャンブルの合法化で、このような異常な状態も改善できるという。ギャンブル反対者の論拠も多くはでたらめであり、一番問題になるギャンブル依存症についても、ギャンブル業者から一定の資金を集めることで対応すべきだと説く。
なかなか目新しい論旨だが、ギャンブル依存症の人間が周りにいる僕としては、諸手をあげて賛成することはできないのだ。
僕も、本書で紹介されている「ギャンブル(カジノ)に反対する人々」に入るのだろう。
★★★