ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『早春スケッチブック』、『夕暮れて』など(ドラマ)

 昨日の山田太一脚本に続き、今日も山田太一関連ドラマについて。先々週から山田太一の記事をたびたび書いてきたが、今回は以前のブログに書いた記事を集めて再録しようという企画である。ということで「山田太一」関連記事はこれで一応打ち止め。また関連ドラマを見たりしたら折に触れて紹介していこうと思う。

--------------------------

(2005年11月3日の記事より)
早春スケッチブック(1983年・フジテレビ)
演出:富永卓二
脚本:山田太一
出演:岩下志麻、山崎努、河原崎長一郎、鶴見辰吾、二階堂千尋、樋口可南子

b0189364_10151946.jpg(1)〜(2)
 山田太一脚本の83年の話題作で、山田太一の人気がピークだった時代に書かれたもの。
 今回見たのはほんの序盤(1、2/12)ではあるが、同時期に放送された『岸辺のアルバム』や『沿線地図』などと舞台設定がきわめて似ている。大学受験生を取り巻く一家の話で、その受験生の視点から家族や社会が描かれるというあんばいだ。突然出会った美人に振り回されるというストーリーも共通だ。これから展開が変わってくるということ(僕はまだ詳しく知らないが、どうやら「死」を扱っているらしい)で、他のものとは違ったテーマを突きつけてくるのだろう(『岸辺のアルバム』も『沿線地図』も、舞台設定は似ているが、テーマはまったく違っていてそれぞれで強烈なインパクトがあった)。今後の展開に期待。
(3)〜(6)
 いよいよ佳境に入り、登場人物同士のぶつかり合いが出てきた。山崎努がなかなか怪演している。ドラマ自体は少し地味目かな。
 最後は(山田太一の定石通り)やっぱり大団円で終わるんだろうなあ……などと考えながら見ていた。
(7)〜(12)
 そしていよいよクライマックス。やはり大団円で終わった。話自体の展開は確かにおもしろいが、あまり強烈なインパクトはなかった。当時のフジテレビの山田ドラマに共通する特徴。当時のものはNHKとTBSのものが良かった。「死」というテーマも、あくまでも見送る側の視点で終始しており、それを超えることはなかった(まあ致し方ないが)。そのため、「死」がひしひしと迫って来るという感覚はあまり持てなかった。やはりこれも、波風が起きた家族のドラマとして見るのが正しいのだろう。
 こういった多少の物足りなさは、もちろん「山田太一が書いたドラマ」という先入観があるから感じるのであって、もし他の人がこの話を作っていれば、最高レベルの評価を与えるところだ。あらためて言うまでもないが、このドラマの水準は高い。
★★★☆
--------------------------

(2006年9月20日の記事より)
夕暮れて(1983年・NHK)
演出:深町幸男他
脚本:山田太一
出演:岸恵子、佐藤慶、笠智衆、佐藤浩市、米倉斉加年、真野あずさ

 83年の初放送時にも見たので、今回で二度目ということになる。テーマ曲の「メモリーズ・オブ・ユー」が印象的である。
 既婚女性の恋愛、つまり不倫がテーマで、だんだん気持ちが進展していくさまがスリリングである。こういうテーマを、この頃山田太一はよく扱っていたが、こういうものが流行りだったのか、それとも単に制作側の好みか。
 不倫が息子にばれるシーンは結構インパクトがあって、その場面ははっきり憶えていたが、結末についてはまったく記憶になかった。ちょっときれいにまとめすぎているかなというきらいはある。
 恋愛なんていくつになってもあるいは既婚者でもしていいとは思っているが、たとえドラマや映画クラスであっても、端で見るとあまり美しくないよなーと思ってしまう。このドラマでもご多分に漏れず(岸恵子が主演であっても)だ。もう少しきれいに描けないものだろうか。
★★★☆
--------------------------

(2006年9月26日の記事より)
友だち(1987年・NHK)
演出:深町幸男他
脚本:山田太一
出演:倍賞千恵子、河原崎長一郎、井川比佐志、菅井きん、うつみ宮土理、小松政夫、下条正巳

 山田太一らしくうまくまとめられたドラマ。夫婦間の嫉妬や不倫を軽妙に扱っている。キャスティングが抜群で、おそらくキャストを想定して書かれたシナリオなんだろう。
 内容は少しまだるっこしく、やや平凡なドラマになってしまっている。だが相変わらず山田太一らしく、視聴者に対する厳しい問いかけはある。
★★★☆
--------------------------

(2006年2月1日の記事より)
たんとんとん(1)〜(26)(1971年・TBS)
演出:木下恵介、川頭義郎
脚本:山田太一
出演:ミヤコ蝶々、森田健作、杉浦直樹、近藤正臣、花沢徳衛、岩崎和子、榊原るみ、松岡きっこ

b0189364_10231316.jpg 大工の世界を扱ったドラマで、家を建てる過程の面白さがあり、またホーム・ドラマとしても楽しめる要素はあるが、全体に一貫性がなく、とりとめがない印象があった。そのため、小さいエピソードを次から次に繰りだして話を進めていくしかなく、少々冗長だった。
 ミヤコ蝶々の東京言葉も非常に違和感があった。大阪出身で東京に嫁いだという設定になっていて、確かにそれ自体には無理がないが、あれだけの芸達者な人が、東京言葉を話すときだけ大根役者になっている。ときどき関西弁でまくし立てるシーンが出てくるが、面目躍如という感じで非常に良い味を出していた。いっそのこと最初から最後まで関西弁中心で通した方が良かったのではないかと思う。
 杉浦直樹、近藤正臣の大工というのもあまり似合わないが、見ているうちにそれなりにはまってきた。近藤正臣は、この頃では珍しく、キザでない役をやって、なかなかよくこなしている。キャストで一番の注目は、なんといっても榊原るみだ。『気になる嫁さん』(1971)や『帰ってきたウルトラマン』(1971)などでも同時期の榊原るみを見ていたが、そのときはあまり感じるところがなかった。だが、このドラマでは非常に可憐で存在感があった。
 ともかく全体的にホーム・ドラマの域を超えるようなところはほとんどなく、山田太一らしさはあまりなかった。
★★★
--------------------------

(2005年10月15日の記事より)
いくつかの夜(2005年・中部日本放送)
演出:山本恵三
脚本: 山田太一
出演:緒形拳、鶴田真由、内田朝陽、仁藤優子

b0189364_1016232.jpg 2005年芸術祭参加作品だそうな。芸術祭に出品するときぐらいしか、山田太一の出番がないというのが寂しい限りだ。しかも土曜日の午後の放送ときている。かつては、ドラマの看板だったのにね、山田太一。
 1時間24分枠のドラマだが、正味1時間10分ほどか。で、ストーリーも、シナリオ・コンクール(大体1時間ものが多い)の入選作のように、安直でひねりがなかった。老境を迎えた男に白馬の王女様(こんな言葉はないが)が登場するという話で、ストーリー自体はリアリティを欠いている。ただし、そこは山田太一。このドラマを見ている限りでは、リアリティが気になることはあまりない。うまいのだ。台詞も、山田調ではあるが、うまい。主要な登場人物が集まってくる場所を設けてしまうなど、山田太一脚本独特の展開を見せるが、それもワンパターンというようなものではなく、見ていてもなかなか心地良く、思わずこれもありかなと思ってしまう。市川團十郎の「にらみ」みたいなものか(←吉例)。ちょっと職人芸を感じさせる。
 最後の落とし方もなかなか心地良い。やはり名人芸だ。
 だが見終わってから、「それにしてもストーリーがこれじゃあね」という気になった。1時間(ちょっとの)ドラマだからしようがない面もあるが……。要は、放送局が山田太一にこの程度のドラマしか書かせなくなったというのが問題なのだろう。
★★★☆
参考:「いくつかの夜」サイト
--------------------------

(2005年12月4日の記事より)
終りに見た街(2005年・テレビ朝日)
演出:石橋冠
原作・脚本:山田太一
出演:中井貴一、木村多江、柳沢慎吾、成海璃子、成田翔吾、窪塚俊介、柳葉敏郎、津川雅彦、柄本明、小林桂樹

 1982年に放送した単発ドラマ(細川俊之、なべおさみ、樹木希林、中村晃子ら出演)のリメイクらしい。『終りに見た街』は山田太一の小説だとばかり思っていたので、ドラマ化されていたというのは意外。
 平成17年から昭和19年の東京へ家ごとタイムスリップするというストーリーを知ったとき、おいおい、タイムスリップかよ!と思った。タイムスリップ・ネタは確かに作る方は面白いのだろうが、なぜタイムスリップしたかという意味づけがきちんとされないと、リアリティがなくしらけてしまう。もちろんそれでも、タイムスリップした後の現代と過去(または未来)のぶつかり合いが面白ければそれはそれで面白くなるのだが、このドラマは、正直そういった面白さもあまりなく、現代人が第二次大戦のさなかに投げ出されたらどうなるかという程度のものだ。戦時ドラマと大して変わりゃあしない。で、つまらんなあと思いながら見ていた……しまいの方までは。
<ここからネタバレ注意>
 が、最後のオチはなかなか秀逸であった。あ、なーるほどという感じだ。現代の東京に原爆が落ち、主人公の清水要治が片腕をなくして瓦礫の中に横たわっていた。つまりそれまでの話は、清水要治の妄想だったという……ま、あれですな、W. ゴールディングの『ピンチャーマーチン』やA. ビアスの『アウルクリーク橋の出来事』、映画で言えばロベール・アンリコ監督の『フクロウの河』(ビアスの原作の映画化)と同じ落とし方なわけだ。安直なタイムスリップネタではなかったということだ。こういうネタは終わりよければすべてよしで、インパクトだけ残して終わるという劇的な効果が望める。このドラマも、見終わった後の衝撃がなかなか良かった。さすが山田太一。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『夕暮れて (1)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『友だち (1)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『終りに見た街 (1982年版)(ドラマ)』
竹林軒出張所『旅立つ人と(ドラマ)』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
by chikurinken | 2013-05-11 10:16 | ドラマ
<< 『もうひとつのアメリカ史』(5... 『午後の旅立ち』(本) >>