ながらえば(1982年・NHK)
演出:伊豫田静弘
脚本:山田太一
音楽:湯浅譲二
出演:笠智衆、長山藍子、佐藤オリエ、中野誠也、宇野重吉、堀越節子
山田太一「老い」三部作、第一弾 妻と離ればなれになった老人(笠智衆)が妻に会いに行くという一種のロードムービー。その過程で、老人ならではのさまざまな難問が降りかかってくる。ということでテーマは「老い」である。前にこのドラマを見たときは僕も若かったが、今回はどっちかというと主人公に近い境遇なので、結構身につまされる……というか、自分に置き換えて考えることが多かった。全編なんとなく『はじめてのおつかい』みたいになっていて、「子どもじゃないのよ、老人はハッハァー」くらいのことは言ってやりたくなるんだが、同時に老人として生きるのはそんなに大変なんだろうかと考え込んでしまう。
途中、ストーリーを作りすぎている箇所があってちょっと白けてしまう部分もあるが、それでもよくできたストーリーと言えると思う。笠智衆と宇野重吉の絡みは、老人側からのアピールみたいになっていて、同じ脚本家の『男たちの旅路 シルバーシート』を思い出させる。ちなみに『シルバーシート』の主役も笠智衆である。
笠智衆が山田太一ドラマで主演しているのは、『シルバーシート』とこの『ながらえば』の他、
『今朝の秋』、
『冬構え』があり、すべてDVD化されている(助演で出演しているのは
『沿線地図』、
『夕暮れて』、『春までの祭』の3本)。どれも野太いテーマを扱っており、山田太一の真骨頂と言えるような作品ばかりだ。
長山藍子、佐藤オリエ、中野誠也ら他の役者も非常にうまく、演出もしっかりしている。当時は、こういった映画並みかそれ以上の水準を持つ重いテーマのドラマが普通に放送されていたんだなと思うと随分時代が変わってしまったもんだと感じる。ともかく80年代の山田ドラマはすごい。
第23回モンテカルロ国際テレビ祭ゴールデンニンフ賞、
第37回芸術祭優秀賞、第10回放送文化基金賞本賞受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』竹林軒出張所『今朝の秋(ドラマ)』竹林軒出張所『沿線地図(1)〜(15)(ドラマ)』竹林軒出張所『夕暮れて (1)〜(6)(ドラマ)』竹林軒出張所『春までの祭(ドラマ)』竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』