カーボン・ラッシュ
〜CO2排出権ビジネスの実態〜
(2012年・加Byron A .Martin Productions/Wide Open Exposure Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
排出権取引の実態
1997年の京都会議で定められた排出権取引についての問題を追求するドキュメンタリー。
排出権取引というのは、ある企業がCO2を規定以上に排出する場合、環境に良い活動を行うその他の企業から排出権を購入することで超過分を相殺し、CO2の排出量をグローバルな視点から規制しようとするメカニズムである。この番組によると、このメカニズムは当初の目論見通りに機能していないばかりか、むしろCO2や有毒ガスの排出を公的に認定する結果になっているという。しかも環境に良い活動を行うはずの企業(排出権を売る企業)が、実のところユーカリの単一植林やアブラヤシのプランテーションを行うことで環境に害を及ぼしており、そういう企業が国連に「環境企業」として認定されている現状があると主張する。しかもこういった企業の中には、農民の農地を強制的に接収したり反対する住民を殺害したりという人権侵害を平然と行うところもあり、結果的に、排出権取引自体が害悪を垂れ流す元凶になっているというのだ。
この番組で紹介されていた事例すべてに問題だけがあるとは思えないが、排出権取引の持つ問題性を明らかにした点、それからホンジュラスやブラジルで行われている人権蹂躙を具体的に紹介した点は評価に値する。さらに、CO2や有毒ガスを垂れ流しにしている企業が、京都議定書の失効後その状態を平然と維持していくことにも懸念を表明している。この点も重要である。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『CO2と温暖化の正体(本)』竹林軒出張所『グレタ ひとりぼっちの挑戦(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『気候変動対策の“死角”(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『"脱プラスチック"への挑戦(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『海に消えたプラスチック(ドキュメンタリー)』