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竹林軒出張所

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京都のゴッホ展 ……あんこも欲しいじゃないか

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 京都・岡崎の京都市美術館で開催されている『ゴッホ展』に行ってきた。
 最近は美術ブームのせいだか何だか知らないが、首都圏や近畿圏で開催される展覧会はどこも超満員という印象で、まったく行く気がしない。こんな展覧会でなぜこんなに長蛇の列が……と思うことが過去多々あり、前売券を買っていたにもかかわらず入口の長蛇の列を見て結局入場を断念したことすらある(東京・上野の森美術館の某展覧会)。10年くらい前の京都国立博物館の雪舟の展覧会も異常な人だかりで、入る前から驚嘆したのだった。本当なら、行列にではなく美術作品に驚嘆したかったところだ。普段なら行列に並んだりするのはイヤだが、もう前売券を買っていたのでしようがなしに30分〜1時間ばかり並んで館内に入ったは良いが、館内では「立ち止まらないでください」などと絶叫する係員がいたりして、パンダを見に来たんじゃねぇなどと心の中で悪態をついて結局ほとんど何も見ずに出口に向かった。こんな環境で美術を見ることに意味があるのか、その辺を関係者に問いたいところだ。そういうわけで、行列のできる展覧会なんか金輪際行く気はない。
 今回の『ゴッホ展』も、「ゴッホ」という美術界のビッグネームで、しかもアムステルダムのゴッホ美術館の作品が50点以上来ているというので、長蛇の列必至と思いながら岡崎に向かったのである。元々の目的がこの展覧会だったわけじゃないので、行列ができていれば入らないつもりでとりあえず現場に赴いた。ところがあにはからんや、大雨だったせいか行列らしきものはなかったのだ。ちょっと驚きながらも、これはチャンスとばかりにチケットを買い入場した。
 内部はラッシュ状態で身動き取れないというほどではないが、絵の前にはそれなりに行列ができていて、人気の美術展であるならこれは致し方ないところ。ただこんな行列に並んでも時間だけが無駄に過ぎるので、とにかく遠目から見ながら、どんどん先に進んでいく。行列ができているのはおおむね最初の方だけで、後は行列があっても適当にまばらになっていて、やや遠目からでも結構見ることができるものである。それに行列が途切れる箇所も結構あるので、そういう場合は絵の前に進んでじっくり鑑賞することもできる。ある程度の行列ができている展覧会の対処法である。付け加えると、こういったやや大がかりな展覧会では、とりあえず最後まで簡単に全作品を見ていって、めぼしい作品があったらまた戻ってくるという方法が経験上一番良い。そういう意味でも行列に並ぶ意味はないと言える。それからさらに付け加えると、どうしてもじっくり見たい展覧会の場合は、閉幕1時間前〜45分前くらいに入るのがベストである。これは、通常の展覧会で閉幕30分前に入場ストップになることから、閉幕30分間は観客がどんどん減っていくためである。特に最後の5分くらいは館内ほとんど独り占めみたいな状態になることもある。
b0189364_92815100.jpg それはさておき今回のゴッホ展だが、異常な行列もなく見せ方自体も悪くなかったが、作品の質にどうしても疑問が残る。ホントにゴッホ美術館の所蔵品点なのかというようなゴッホの魅力に乏しい作品ばかりだった。ゴッホの作品の魅力はなんと言っても色彩で、特に晩年の淡い緑色は他の作家にない魅力を放つ。ゴッホはともすれば表現主義的な面が語られ、狂気がかった作品が注目を浴びることが多いが、実際のところ真の魅力は色彩である(と思う)。1985年に大阪の国立国際美術館でゴッホの大回顧展(ヴァン・ゴッホ展)を見たときに僕はそのことを思い知らされた。当時学生だった僕は、どうしても狂気がかったゴッホ像に目が行きがちでそちら方面の作品に注目しがちだったが、色彩豊かな多くの作品を目にして、この色彩こそが死後ゴッホが評価された理由だと確信したのだった。今回のゴッホ展は、残念ながらそういう色彩が魅力の絵がほとんど無かった。なんでも今回の展覧会、ゴッホのパリ時代(1886〜1888年)の絵が多いということで、その辺が理由なんだろうと思う。ゴッホの傑作がアルル時代(1888〜1889年)、サンレミ時代(1889〜1890年)、オーヴェール時代(1890年)に集中していることから考えると、なにゆえにパリ時代の作品ばかり集めたのだろうと疑問を持ってしまう。どう考えても今回のこのラインアップは画竜点睛を欠くとしか思えない。たとえ自画像を10点集めたところで、どれもプリミティブな作品ばかりで目玉になり得ない。パリ時代の解説があってそれなりに意味づけしているが、ゴッホの作品歴の中ではこの時代は予備的な部分といっても差し支えなく、後の時代があってこそ引き立つ作品群である。だから本当に目玉の部分がないと言えるんだ、今回の展覧会は。
 聞くところによるとゴッホ美術館は現在改修中らしく、そのために今回のように大量の作品が海外に出されたんだろうが、なぜよりによって画家の人生の中で周辺部と言って良いような作品ばかりが来たのか、それについては謎である。アンコの部分の一番美味しい作品群は、どこか金と政治力を持っている美術館がガバッとまとめて借り受けたのか、あるいはゴッホ美術館自身が重要な作品群を出すのを渋ったのか、それは一切わからないが、結局目玉のない「ゴッホ展」になってしまい、「ゴッホ展」と名うつにははなはだもの足りない作品展になっていたのは残念至極であった。

ゴッホ展 -- 空白のパリを追う --
会場:京都市美術館
期間: 2013年4月2日(火) -- 2013年5月19日(日)、その後、宮城、広島に巡回
by chikurinken | 2013-04-08 09:28 | 美術
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