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竹林軒出張所

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『ピアノの詩人ショパンのミステリー』(ドキュメンタリー)

ピアノの詩人ショパンのミステリー(2007年・NHK)
NHK-BSプレミアム ハイビジョン特集

演奏者ならではの「ショパンのミステリー」

b0189364_214117.jpg ピアニスト、仲道郁代が、ショパンの楽曲に迫るドキュメンタリー。
 ショパンの楽譜には、ペダリングの指示や指使いの指示が細かく書かれているが、その指定位置に違和感を感じていたという仲道郁代。このドキュメンタリーでは、そんな彼女が、ショパンの故国、ポーランドやフランスを訪れ、その違和感の源泉を探る。
 ポーランドでは、生まれ育った町、ワルシャワとショパンの生家を訪れ、ショパンの足跡に触れる。このあたりは「いかにも」な紀行番組風である。
 ショパンは、21歳でパリに赴き、その後死ぬまで二度と故国に戻ることはなかった。そこで、次に訪れたのはフランス。ジョルジュ・サンドと過ごしたノアンという町を訪れ、そこで、ショパンが生きた時代に作られたというピアノに触れる。
 ちなみにピアノという楽器は、古典派の時代からたびたび改良が加えられ、現代のピアノとベートーヴェンの時代、あるいはショパンの時代のピアノでは大きく異なる。音の大きさも違えば響きも違う。この古いピアノで、ショパンの曲をいくつか実際に弾いてみて、仲道さん、感じるところがあった。つまり、ショパンのペダリングや指使いの指示に、現代ピアノで感じていたような違和感をまったく覚えないというのである。音の鳴り方が違うというのだ。要するに、ショパンの指示は、彼が生きた時代のピアノの音響を活かすためのものであり、現代のピアノの演奏だと、結果的にそれが活かされない。つまりショパンのピアノ曲は、ショパンの時代のピアノで弾いてこそ、本当の味がわかるという結論に達したのであった。こうしてショパンのミステリーが一つ解決されることになった……という、そういう番組である。
 この仲道郁代さんであるが、デビューしたての頃はアイドル歌手のような風貌で、ヴィジュアル系クラシック奏者の走りみたいな人だ。実際当時、追っかけなんかもいたらしい(僕も若い頃一度、ライブで彼女の「皇帝」を聴いたことがある)。そのため、どうしてもそういうイメージが伴うんだが、この番組でショパンのミステリーを追求する姿は、研究者のようでもあり、探究の意欲がひしひしと伝わってきた。
b0189364_224747.jpg 今回の例に限らず、古楽器での演奏というのは、ここ40年ほど活発に行われていて、今や古楽器演奏は珍しいものではなくなっている。ただ、それでも古いピアノ(ピアノフォルテ)で演奏した例は比較的少ないんじゃないかと思う。かつて、古楽器演奏の大家、クリストファー・ホグウッドが、ベートーヴェンの時代のピアノフォルテを使ってピアノ協奏曲全集を出したことがある。しかも、ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲が作られた時代にピアノが大きく進化(変貌)していたことを反映して、楽曲ごとに使用するピアノを、制作年にあわせて変えるという念の入れようであった。僕はベートーヴェンのピアノ協奏曲と言えば、ホグウッドのこの盤を聴くんだが、世間ではあまり評判が高くなかったようで、永らく絶版中である(輸入盤はある。『Piano Concertos & Sonatas』参照)。それはともかく、ピアノ独奏についても、是非、作曲家と同時代のピアノで演奏するという企画を増やしてほしいと思う。このドキュメンタリーでこういう結論が出たわけだから、それなりの必然性はあると思うんだな。是非、仲道郁代さんにそういうアルバムを出してほしいものだ。そういうことを感じたドキュメンタリーだった。
★★★☆

追記:「仲道郁代さんにそういうアルバムを出してほしいものだ」と書いたが、調べてみたらすでに出てました。協奏曲だが。『ショパン:ピアノ協奏曲第1番、第2番』というアルバムがそれ。ピアノだけでなく、オーケストラの方も古楽器なんだと。いずれ近いうちに聴いてみたいと思う。

参考:
竹林軒出張所『ショパン・時の旅人たち(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『チョピンとは俺のことかとショパン言い』
竹林軒出張所『ホグウッドのモーツァルト』
竹林軒出張所『ショパン 愛と哀しみの旋律(映画)』
竹林軒出張所『別れの曲(映画)』
by chikurinken | 2013-03-27 08:50 | ドキュメンタリー
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