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竹林軒出張所

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『古代ギリシャの"コンピューター"』(ドキュメンタリー)

古代ギリシャの"コンピューター" アンティキテラの謎
(2012年・NHK/英Images First他)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

超正統派科学ドキュメンタリー

『古代ギリシャの\"コンピューター\"』(ドキュメンタリー)_b0189364_22234034.jpg ディスカバリー・チャンネルあたりで放送されそうな科学ドキュメンタリー。
 1901年にギリシャのアンティキテラ島沖の海底で古代ギリシャ時代のものと思われる工芸品が見つかった。石灰石が堆積して本来の姿から大分かけ離れているが、どうやら青銅製の歯車が複雑に組み込まれていたようだ。その正体は長い間不明だったが、1950年代にプライスという科学者がX線写真を利用して、歯車が全部で27個あり(実際には50個以上あったことが後に判明する)、その中の1個の歯車の歯の数が127個あることをつきとめた。そこから127という数字を手がかりに、これは月や太陽などの天体の運行を示す機械ではないかという見方が一気に広がってきた(この数字が、月だか太陽だかの公転だか自転だかに関係しているらしい)。
 そして10年ほど前、世界中のさまざまな分野の学者が集結して、この正体を突き止めようというプロジェクトが始まった。テクノロジーの発展もあいまって、これまで謎だった内部の様子がわかるようになり、ギアの歯の数などからさまざまな推理が行われる。専門家がそれぞれの知識を駆使しながら推理を進めていくが、その後さらに表面に刻印されているギリシャ文字も判読できるようになって、ついにその正体が突き止められることになる。
 結果、当初の予想どおり、これは太陽と月の運行を計算する装置で、月食や日食まで予測できるというものであることが判明したのだった。ギアが複雑に組み合っており、中にはカムを利用したりと、非常に高度なテクノロジーで構築されていることがわかった。今回のプロジェクトに関わったある学者は、これをギリシャ時代の「コンピューター」であると呼んでいたほどで、古代ギリシャ時代の高い学術レベルが証明されることになったという、そういう話のドキュメンタリーである。もっとも僕が見た感じでは「コンピューター」というのはちょっと言い過ぎで、時計の感覚に近いと思う。実際のところ、このギアを組み合わせた巧妙なシステムは、ギリシャからその後アラビア世界に伝わり、近世になるとスペインを経由しヨーロッパに伝わって、その後時計の技術として復活することになったらしい。
 ともかく、過去の遺物から、さまざまなテクノロジーを駆使してその正体を推測していく過程はなかなか面白く、科学ドキュメンタリーとしてよくできた番組だったと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ねじとねじ回し(本)』
竹林軒出張所『万年時計(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2013-03-08 08:22 | ドキュメンタリー
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