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竹林軒出張所

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『トキワ荘の青春』(映画)

トキワ荘の青春(1996年・カルチュア・パブリッシャーズ)
監督:市川準
脚本:市川準、鈴木秀幸、森川孝治
出演:本木雅弘、鈴木卓爾、阿部サダヲ、さとうこうじ、大森嘉之、古田新太、生瀬勝久、翁華栄、きたろう、北村想、時任三郎、桃井かおり

静かで、まったく熱くない青春映画

b0189364_829255.jpg 昭和30年前後にトキワ荘に集結したマンガ家たちの青春を描く映画。
 最初から最後まで静かに静かに時間が過ぎていき、いかにも市川準らしい映画と言える。長回しがかなり多く、しかもトキワ荘のシーンはほとんどがローアングルで撮影されているなど、こういった要素が静けさの表現につながっている。
 主人公は本木雅弘演じる寺田ヒロオで、寺田ヒロオを中心に添えるというのも、トキワ荘関連のものでは珍しい。寺田ヒロオは、トキワ荘のリーダー的存在で、しかもものごとにきっちりしていたらしく、本木雅弘がこれを静かに淡々と演じていて好感が持てる。本木雅弘がかつて「撮影中こんなので映画ができるんだろうかと思ったが試写を見て納得した」というような話をしていたが、それがよくわかるような、生活の中に詩があるとでも言うのか、雰囲気が非常に魅力的な映画に仕上がっている。
 マンガ家たちには劇団関係者が多数キャスティングされたという話で、当時無名な人が多かったようだが、阿部サダヲや古田新太、生瀬勝久はこの映画の後ブレークしたようだ。劇団関係者といえば、北村想まで手塚治虫役で出ていて、ちょっと珍しい配役と言える。
 映画の中では、割合有名なエピソード、たとえば石森章太郎の美人の姉や、赤塚不二夫が墨汁を部屋中に飛ばした話などが出てくる。もちろん漫画少年の学童社が倒産してバタバタする様子も出てくる。売れっ子になっていく石森、藤子不二雄の傍らで、なかなか芽が出ない赤塚不二夫、森安なおやという対比が現実の厳しさを表現して、ほろ苦さも醸し出している。トキワ荘のマンガ家たちを等身大で甦らせたような映画で、しかも詩的な要素が多く、心地良い空気に包まれる佳作であった。テーマ曲(霧島昇の「胸の振子」)も良い味を出している。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『病院で死ぬということ(映画)』
竹林軒出張所『トキワ荘の時代―寺田ヒロオのまんが道(本)』
竹林軒出張所『まんが道 (1)、(2)(ドラマ)』
竹林軒出張所『まんが トキワ荘物語(本)』
竹林軒出張所『トキワ荘青春日記―いつも隣に仲間がいた…(本)』
竹林軒出張所『烏城物語(本)』
by chikurinken | 2013-02-20 08:32 | 映画
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