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竹林軒出張所

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アドリブの相乗効果 - 『YOUは何しに日本へ?』が面白い

 テレビ番組が最近つまらないというのは誰もが実感することだろう。お笑いタレントを呼んできてウチでやっている遊びを再現するような、安易な作りの番組がやたら増殖しているが、もういい加減よしたらいいのにと思う。作り手のレベルの低さをさらされたところでまったく笑えない。
b0189364_98146.jpg それでもやはり毎週テレビで見る番組というのはあって、僕自身は特に最近はテレビ東京系のものが増えているように思う。前もテレビ東京系の深夜枠について書いたが(竹林軒出張所『日本世間噺体系テレビ版』参照)、最近興味深く見ているのが、やっぱりテレビ東京系深夜枠の『YOUは何しに日本へ?』という番組。
 成田空港にいる外国人旅行者に「YOUは何しに日本へ?」と訊き、内容が面白そうだったら同行取材するというただそれだけの番組で、コンセプトはあるが、結構行き当たりばったりで、アドリブ満載、「なるようになる」的なバラエティ番組である。同じ局の『和風総本家』の1企画みたいな内容で、またこういうのをやらせるとテレビ東京はなかなかうまいんだ。そう言えばやはり同じテレビ東京の『田舎に泊まろう』という番組も似たような同行取材番組であった。こういうアドリブ番組は、何を拾って何を採用し、どうまとめるかにすべてかかっているが、この『YOUは何しに日本へ?』では、今のところ毎回かなり面白い人々を拾いまくっていて、まったく飽きない。意外性もある。
 で、今週放送されたのが、日本海側の都市を自転車旅行するために日本に来たというドイツ人に密着する企画で、いつもはこの番組、数人の人々のインタビューと約2組の密着取材で構成されるんだが、この回はこのドイツ人のみ。つまりスペシャル企画なわけだ。
 実はこのドイツ人、かつてこの同じ番組のパイロット版(以前特番として2回放送されている)のときに登場したらしく、その際に彼が青森に行き、自転車をそこで調達するまでを撮影クルーが追っていったようなのだ(このパイロット番組については見ていなかったが、今回の放送の前半でそのときの模様が放送された)。
 要するにこのドイツ人、「日本海側を自転車で旅する」という目的はあるが、それ以外、何も計画を立てずに来日したということなのである。簡易テントとそこそこのお金は持っているが、かなり行き当たりばったりで、もちろん日本語もろくに喋れない。そういう人が普通列車で東京から青森まで行き、そこで自転車屋を探して、スポーツ車を購入するという、なんだかもうすごい展開になるんだな。しかも買った自転車が30〜40年前の、小・中学生向けでライトがたくさんついたヤツ(ちなみに新車)で、それをなんと5000円で買っていった。ネットに出せば10万円超えるんじゃないかというビンテージものなんだが、すでにここらあたりで面白ネタの宝庫になっている。その後、彼はこの自転車にまたがり、竜飛岬目指して北上していく。坂があれば適当に自転車を押していき、なんだか気ままなもんである。ノープランでいかにも呑気なこのドイツ人を、やはりノープランのこの番組が密着するという、ノープラン同士の相乗効果が番組を面白くしている。ここらあたりまでがパイロット番組で放送された部分である。
 その数ヶ月後、スタッフのところにこのドイツ人から「東京に戻ってきた」というメールが来て、東京で再会することになる。ここからが番組の後半部分で、今回のオリジナル部分。東京のとあるホテルでスタッフはこのドイツ人と無事再会し、今度は彼の東京自転車観光を追っていく。ちなみにあの5000円自転車は健在で、なんでも東京に来る前に、青森から日本海側を南下し、新潟や山口を経由して九州、鹿児島まで行き、そこから再び自転車で東上してきたという話で、そこらあたりの事情は彼が撮影した写真を使ってうまく編集して放送された。そもそも自転車旅行の同行取材だけでもある程度面白くなるのに、そこに「外国人旅行者」、「行き当たりばったり」という面白さが加味されて、この企画、出色のできになった。なにしろこのドイツ人のキャラクターもまた魅力的で、この企画を一層引き立てている。
 通常の放送でも、出てくる外国人の方々がなかなか魅力的で面白いが、おそらくしばらく続くうちにこの番組もワンパターン化していくんだろうと思う。ただテレビ東京の番組は引き際もまた良くて、良いタイミングで終わることも割合多い。放送業界の中では永らく地味な位置を占めていた同局だが、いちやくトップに躍り出る日も近いんじゃないかというような昨今の充実ぶりである。正直今の段階でも、NHKとテレビ東京以外、あまり見るべきものがないという状況なのだ。作り込んだNHKとアドリブに強いテレビ東京、それぞれ持ち味が出ていてよろしいんじゃないかと思う。

参考:
竹林軒出張所『取材ディレクターが語る18のアザーストーリーズ(本)』
竹林軒出張所『「反復練習が上達を生む」の実証 - 「ひたすら一万回」』
竹林軒出張所『日本世間噺体系テレビ版』

by chikurinken | 2013-02-15 09:04 | 放送
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