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竹林軒出張所

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『「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場』(本)

「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場
小出裕章、渡辺満久、明石昇二郎著
集英社新書

名ばかりの危険物処理施設は存在自体が危険

b0189364_841101.jpg 福島第一原発の事故で、さしもの日本の原子力行政も転換するかと思っていたが、いつのまにかまた甦ってきた。まったく懲りない連中がいるもので、人間は失敗から学ぶってことを理解していない愚か者がこの国を牛耳っているのはまったく嘆かわしい限り。日本国が完全に滅びない限り気が付かないんだろう。もっとも滅びてしまったら後の祭りだが。
 そういう昨今の風潮の中、もんじゅも生き返り、そして今また六ヶ所村の再処理工場も何もなかったかのように計画が進んでいる。これが操業を始めた日にゃ、核物質による環境汚染も桁違いだし、それに今度事故が起こったらそれこそ取り返しがつかなくなる。
 この本は昨年の8月に発行された本だが、それ以降、国内の原子力行政の状況が一段と悪化している。こういう状況だからこそ、こういう本の価値も上がるというものである。で、内容であるが、六ヶ所村の再処理工場の問題点を書き連ね(第1章、小出裕章担当)、同時に「地震で爆発事故が発生したら」という想定のシミュレーションが紹介されている(第2章、明石昇二郎担当)。さらにこの再処理工場の下を活断層が通っていることを地震学の専門家が1章を費やして解説している(第3章、渡辺満久担当)。明石昇二郎のシミュレーションは、『原発崩壊 増補版』(竹林軒出張所『隠される原子力・核の真実(本)』参照)同様、被害想定がやや大きすぎるきらいはあるが、ただし再処理工場の場合、よくわからない部分があるので、大きすぎるかどうかはにわかに判断できない。少なくとも、その基となるデータや論拠が示されているため、荒唐無稽なものでないことは確かである。ともかくこの規模の災害が起こったら、日本は沈没間違いなしである。
 もっとも事故が起こらないとしても、環境への核物質排出は桁違いに大きく「原発1年分の放射能を1日で放出する」らしく、それを考えると、存在自体が容認できないのは火を見るより明らか。しかも「核廃棄物の再処理」事態、まったく不要なプルトニウムを取り出すという作業であり、核兵器を作るというのなら別だが、現状ではプルトニウムの使い道さえなく、そう考えると本来まったく不要な作業である。不要な作業のために(本来であれば)不要な不安を抱えたまま、不要な汚染をし続けるという施設で、そもそも必要かどうかという議論をする以前の問題であると思う。この本を読めばそういうことがわかるようになっている。興味のある方は読んでくださいという他ないんだが、一方で、日本人ならこういうものが作られようとしているということぐらい知っておいた方が良いんじゃないかとも思うんだな。そうしたら少なくとも原発を推進するような政治体制が生まれることはなくなるだろうと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『六ヶ所村ラプソディー(映画)』
  (六ヶ所村の今を伝えるドキュメンタリー映画)
竹林軒出張所『核燃料サイクル 半世紀の軌跡(ドキュメンタリー)』
  (日本の核燃料サイクルの現状)
竹林軒出張所『終わらない悪夢 前編、後編(ドキュメンタリー)』
  (フランスの核燃料サイクルの現状)
竹林軒出張所『隠される原子力・核の真実(本)』(小出裕章の著作)
竹林軒出張所『原発崩壊 増補版(本)』(明石昇二郎の著作)
by chikurinken | 2013-02-12 09:03 |
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