命のあしあと(2013年・NHK宮崎)
演出:佐々木知範
脚本:清水有生
出演:陣内孝則、高岡早紀、大地康雄、泉谷しげる、須藤菜々子、温水洋一
説明に終始したのが残念、だが意欲は買いたい
前にこのブログで紹介した『無垢の島』(
竹林軒出張所『無垢の島(ドラマ)』参照)同様、NHKローカル放送局で製作されたドラマ。こちらは宮崎放送局製作で、題材は数年前宮崎で流行した口蹄疫である。
主人公、修平(陣内孝則)は「牛養い」つまり牧畜業を営んでいて、彼が住んでいる町自体に牧畜業の人々が多い。そこへ突如降って湧いた口蹄疫により、町はてんやわんやの騒ぎになる。修平も牛舎を消毒してまわったり人を外部から自分の牛舎に入れないようにしたりして対策をするが、町では口蹄疫の被害が増えていき、修平にも決断が迫られるというストーリーである。
おそらく実話を基にした話で、ストーリー展開は説得力がある。が、全体的になんとなく説明的で、結局再現ドラマに終始してしまったきらいがある。再現ドラマだけで終わってしまうと正直あんまり面白くない。脚本家はベテランの人で、それなりに味付けはあったが、やはり多少の物足りなさは残った。ただ、ニュースではなかなか伝わってこないミクロ・レベルでの口蹄疫の被害状況がよくわかり、ドラマとしてはともかく、1つの情報ソースとしてはなかなか価値が高い。特に生産者が、飼っている牛に対してこんなに思い入れを持っているというのは、部外者には想像がつかないものである。その点、少しばかり目ウロコであった。
キャストはそこそこ豪華で、皆宮崎弁をしゃべる。このあたりローカル・ドラマならではでなかなか良い。演技は全体的に少し大げさで、演出家がもう少し口を突っ込んでも良かったんじゃないかと思うが、ローカル放送局のディレクターだとなかなかそうも行かないのかも知れない。結果的に陣内孝則や泉谷しげるといったせっかくの好素材があまり活かされていなかったのは少し残念ではある。高岡早紀は、僕の中では『タイトロープの女』(
竹林軒出張所『タイトロープの女 (1)〜 (6)(ドラマ)』参照)のイメージがいまだに強くて、恐ろしく気の強い、怖い女性のイメージが残っているんだが、このドラマでは優しい内助の奥様を演じていた。少しホッとした。
★★★参考:
竹林軒出張所『無垢の島(ドラマ)』竹林軒出張所『“くたばれ” 坊っちゃん(ドラマ)』竹林軒出張所『ラジカセ(ドラマ)』