輝きたいの(1984年・TBS)
演出:生野慈朗
脚本:山田太一
出演:三原順子、今井美樹、畠山明子、小栗絵里花、小倉由美、菅原文太、和田アキ子、戸川京子、太宰久雄
もう一つ輝けなかったイロモノ・ドラマ
30年近く前の山田太一脚本のドラマ。84年といえば、『ふぞろいの林檎たち』や『日本の面影』の直後で山田太一の全盛期だが、このドラマは、まずくはないがかなり地味である。民放の1時間枠×4回というやや変則的な時間枠で、どういういきさつで放送されたかもよくわからない。また、山田太一がなぜ女子プロレスを取り上げたかもよくわからない(これについては
『テレビがくれた夢』で言及されていた)。当時の女子プロレスは、クラッシュギャルズ、極悪同盟、ブル中野とかの時代に当たるのだろうか。ジャガー横田やデビル雅美が健在だったのかもまったく知らないが、ジャガーとデビル、クラッシュギャルズはこのドラマにも顔を出す。
東洋女子プロレスに新しく入団した5人を中心とした物語で、この5人とは、オーディションに応募して合格した3人(今井美樹ら)と応募しないが入団する1人(三原順子)、応募して落選したが入団する1人(畠山明子)。他に、東洋女子プロレスのトレーナーを菅原文太と和田アキ子、社長を太宰久雄が演じる。4回シリーズのドラマということもあり、話はわりあい平坦に進んでいく。盛り上がりもあるが、起伏はあまり大きくない。そういう点で、山田太一というより市川森一のドラマのようにも思える。女子プロレス・ネタとしては割合ありきたりで、ストーリーはおおむね想定の範囲内、ということでどうということのない話だが、ましかし、ドラマとしては破綻もなくうまくまとめられているんで、普通に楽しめる。
特徴はやはりキャスティングで、今井美樹と三原順子がリングで格闘するシーンは、今となってはなかなか貴重ではないかと思う。ちなみに今井美樹はこのドラマがドラマ・デビュー作、一方の三原順子は『金八先生』のイメージのままのツッパリ中学生を演じている。中学生を演じてはいるが、実はこのときすでに20歳。とは言うものの『金八先生』のイメージがあるからかあまり違和感はなかった。
主演の新人5人の中に1人ガタイが良くプロレスの動きもサマになっていた人がいたが、どうやら小倉由美という女子プロレスラーだったようだ。僕は女子プロレスのことはほとんど知らないので気がつかなかったが、もしかしたらファンの間では当時結構話題になっていたのかも知れない。しっかり女優していたんで、演技面ではあまり違和感がなかった。だがこういう話題性が先行しそうなドラマであることを考えると、どちらかというとイロモノに近いドラマだったのかなとも思う。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『1993年の女子プロレス(本)』竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2 続き(補足)』竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『ちょっと愛して…(ドラマ)』