同期生 「りぼん」が生んだ漫画家三人が語る45年
一条ゆかり、もりたじゅん、弓月光著
集英社新書
一条ゆかり、面白すぎっ!
一条ゆかり、もりたじゅん、弓月光の3人の少女マンガ家の自伝的エッセイを集めた本。
この3人、それぞれ経歴もマンガの傾向も違っているが、「第1回りぼん新人漫画賞」(1967年)を経てデビューしたという共通点を持っている。標題が『同期生』となっているのはそのためで、したがって同時期に雑誌『りぼん』と関わったという経歴を持つ。
雑誌『りぼん』は、著者らによると当初小学生向けというイメージだったらしく、雑誌自体にはあまり関心がなかったということで、3人が3人、賞金が高いためにこの賞に応募したという。一方で『りぼん』編集部の方でも、『りぼん』の雑誌としてのあり方を少し変えたいという意向があったそうで、そこに個性的な3人を取り込むことができ、誌面はこの3人を軸にして少しずつ変貌していったという。
この3人、年齢も近く、しかも出身地もそれぞれ岡山、広島、兵庫と近く、特に一条と弓月は授賞式からすぐに意気投合して連絡を取り合っていた。2人とも当時高校3年生で、プロのマンガ家になることを志したのもこの受賞がきっかけだったという点でも共通している。一条の方は、デビュー前から弓月のことを知っていたらしく、
「実は、弓月のことは、すでにチェックをしてました。あの絵は「少年」で入選してた<西村司>と似ているぞ。<西村司>のくせに「弓月光」だなんて宝塚か芸能界のような恥ずかしい名前だが、<藤本典子>のくせに「一条ゆかり」と更に恥ずかしい名前を付けた私には思われたくなかったであろう。」(第1章「一条ゆかり」より)
ということらしい。
3人とも、マンガ家としての来し方を率直に書き綴り、マンガに対する真摯な姿勢も随所に見え隠れする。途中おのおのの作品も紹介され、どういう態度・意識で執筆したかが綴られるが、残念ながら僕は弓月光以外よく知らないので、そういう面では伝わってくるものがあまりなかった。ただし弓月光については、『りぼん』連載時から読んでいてよく知っていたため、執筆の裏話がわかって面白かった。とは言っても記述自体は有り体で多少面白さに欠ける。文章が一番面白かったのは一条ゆかりで、特に前半はお奨めである。全体的に雑な文章で、もしかしたら聞き書きかも知れないが、それでも何か吹っ切れたような文体は興味深いところ。
いずれにしても戦後マンガ史の一側面をかいま見れるような記述は貴重である。なお、もりたじゅんは現在、本宮ひろ志の夫人で、彼女の章からは、本宮ひろ志との共作関係、本宮プロダクションの有り様みたいなものが窺われてこちらも興味深かった。
★★★☆