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竹林軒出張所

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ノンフィクションの崖

 このブログで紹介する本といえばもっぱらノンフィクションで、それもそのはず、僕は小説をほとんど読まないと来ている。以前はノンフィクションもフィクションもそれなりに読んでいたが、小説は読んだ後ガッカリすることが非常に多くなってきて、それであまり読まなくなった。古典ものの文学はガッカリ度合いが小さいのでたまに読むが、それでも「読む」と言えるほどは読んでいない。
 ノンフィクションものをよく読むようになったのは学生の頃で、その頃『本の雑誌』にノンフィクションの書評のコーナーがあって、たしか香山二三郎って人が評者だったと思うが(間違ってたらゴメンナサイ)、ここで紹介される本に水準の高いものが多くて、それでノンフィクションの世界にはまっていくことになったというわけ。
 だが、『本の雑誌』でもノンフィクションのコーナーが縮小したかなくなったかで、やがてこの雑誌も読まなくなるんだが、そうするとなかなかノンフィクションの書評というものにもめぐり逢わなくなる。そうした折に見つけたのが毎日新聞の日曜版の書評、「今週の本棚」で、これはもちろん当たり外れもあるんだが、割に良い本、良い書評が多くて、それ以来このコーナーが最近に至るまで僕にとってのノンフィクション本の指標になった。面白そうな本の記事はスクラップしてたくらいだ。
b0189364_9315252.jpg ところがここ1年ほど、「今週の本棚」で紹介されるノンフィクション本がことごとくつまらなくなっていて、最近は一瞥するだけであまり読む気が起こらないという有様になっている。何でも、この「今週の本棚」、日本の新聞雑誌の書評に一大転換を起こすため、毎日新聞が丸谷才一に依頼して始まった企画だったそうな。丸谷才一の弁によると、1992年に「今週の本棚」が始まって以来、実際に他の新聞社の書評欄も充実してきたとかで、「われわれは書評といふ角度からはいつて日本文化全体を活性化した」ということらしい。ちなみにこれは、『愉快な本と立派な本』という本の巻頭言「三ページの書評欄の二十年」に書かれている文章で、この巻頭言では「今週の本棚」が始まったいきさつについても丸谷才一の視点で書かれている。
 この記述から「今週の本棚」が(僕だけでなく)世間でも評価が高かったというのがなんとなくわかったんだが、その中から質の高い書評を集めてまとめた本というのが昨年立て続けに出版された。上記の『愉快な本と立派な本』もその1冊で、他に『分厚い本と熱い本』『怖い本と楽しい本』の2冊が出ており、それぞれ1992〜1997年、1998〜2004年、2005〜2011年の「今週の本棚名作選」ということになっている。
 先ほども言ったが、ここ1年、特にここ半年ほど「今週の本棚」の書評の質が落ちていると感じていたのだが、もしかしたら丸谷才一の死と関係しているのではないかとも思っている。ご承知の通り、丸谷才一は昨年10月に死去しているんだが、なんとなくそれと符合しているような……ということはこの「今週の本棚」、丸谷才一色がかなり出ていたということができるのだろうか。いずれにしても、「今週の本棚」のレベルの低下は目に余るものがあり、ノンフィクションの書評はこれからあまり期待できないんじゃないかと思う。
 そもそもブログで書評をし始めたのも、世間にノンフィクションの書評が少ないと感じていたことが一因で、かつての『本の雑誌』や「今週の本棚」までは行かないにしても、その一翼の隅っこの方にでも居場所があれば良いなくらいの感覚はあったわけだ。今も、ネットの書評や新聞、雑誌の書評を折に触れて見ているが、正直あまり良いものはなく、そういうわけで僕が取り上げる本も、自分自身、最近質が落ちているような気がしているのだ。そもそも目にとまらなければ面白い本に出会うことすらないわけで、やはりどこかで探す必要がある。最近は書店にもあまり行かなくなったし、新刊の類に触れる機会も少なくなっている。面白い本にめぐり逢うための方策を何か考えなければならないと感じている年頭である。
by chikurinken | 2013-01-03 09:33 |
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