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竹林軒出張所

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『アフリカ争奪戦 富を操る多国籍企業』(ドキュメンタリー)

アフリカ争奪戦 〜“富”を操る多国籍企業〜
(2012年・国際共同制作NHK/Guldbrandsen Film/Steps International他)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー シリーズ「世界の貧困」
演出:クリストファー・グルバンセン

b0189364_7585972.jpg 南北問題の1側面を告発するドキュメンタリー。アフリカのザンビアにある銅山が多国籍企業によって牛耳られているため、それがザンビアに何の富ももたらしていない状況を紹介する。
 ザンビアは大量の銅を埋蔵している他、さまざまな天然資源を抱えているが、かつて銅価格が暴落したあたりから経済が破綻し始め、結局国営の鉱山を多国籍企業に安い値段で売却せざるを得なくなった。ここでもIMFや世界銀行の影が見え隠れするわけだが、ともかく本来であれば国民の生活に還元されるべき資源が、グレンコア社などの多国籍企業に売り渡されてしまった。そのために鉱山開発による収益はザンビア国内に残らず、しかもこの企業が巧妙に税金逃れをしていることから、ザンビア政府には税収すら入らない。「移転価格」という手法で、税金の安い国(この場合スイス)に置かれた関連会社との間で架空取引をすることで、税金をごまかしているわけだ。
 その上、採掘工場からはわけのわからない毒物が大量に放出され、近隣の住民は健康被害に悩まされている。そこには南北問題の縮図がある。一方でヨーロッパにはこういった状況を告発している勢力もあり、彼らの助けによりザンビア政府もこの企業に対して圧力をかけ始めている。そもそも「移転価格」という手法自体、外からは大変わかりにくい方法らしく、小国の政府ではなかなか対応できないという。そのため、ヨーロッパのさまざまな団体の支援が非常に重要になるわけだ。
 グレンコア社の方はというと近年大変な利益を上げていてウハウハ状態のようだが、「本来ならそれはあんたたちが懐に入れるべき金じゃないんだよ」と言ってやりたくなるところだ。ともかくこういう恥知らずな連中が人の持ち物を平気で懐に入れてのさばっている状況は、世界中のあちこちで見られ、なかなか変わることがない。ベネズエラのウゴ・チャベス大統領が石油の国有化に踏み切ったが、ああいった思い切った政策を実行しない限りこういった泥棒行為はなかなか是正できないんであって、いまだに植民地主義があちこちに見受けられるようで気分が悪いったらない。こういうドキュメンタリーを見ると、社会正義は一体どこにあるのかとまことに暗い気持ちになる。
 このドキュメンタリーは『BS世界のドキュメンタリー』の「世界の貧困」シリーズの1本だったが、このシリーズ、全体的に水準が高かった。中でも前に紹介した2本、『パーク・アベニュー 格差社会アメリカ』『中国 教育熱のゆくえ』は、いろいろ考えさせる内容でなかなかの力作だった。このシリーズ、好評だったのか知らんが、なんでも2013年の1月1日、2日にまとめて再放送されるらしい。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『パーク・アベニュー 格差社会アメリカ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『中国 教育熱のゆくえ(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2012-12-21 08:09 | ドキュメンタリー
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