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竹林軒出張所

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『ファウスト』(映画)

ファウスト(1926年・独)
監督:フリードリヒ・W・ムルナウ
脚本:ハンス・カイザー
出演:ヨースタ・エックマン、エミール・ヤニングス、ウィルヘルム・ディターレ、カミルラ・ホルン

『ファウスト』(映画)_b0189364_8571977.jpg ドイツに古くから伝わる「ファウスト」伝説を映画化したもの。なにしろ古いサイレント映画で、「古典」の部類に入る。監督は巨匠、F. W. ムルナウ。
 悪魔に魂を売ったファウストの悲劇であるが、映画自体も古い上題材も古いので正直あまり期待していなかったのだが、展開はなかなかスリリングで、エンタテイメントとしてもよくできている。さまざまな特撮技術を駆使しており、しかもその多くが非常に効果的である。90年近く前の映画でありながら、映像技術については古さを感じさせない。逆に言えば、この頃から撮影技術自体はあまり変わっていないということになるのか。もちろん、サイレント時代の映画だけにメイクは異様に派手で少し気味が悪いが、逆にメフィストフェレスについてはこういうメイクがかえって味を出していて、トータルで見るとそれほど悪くないとも思える。背景に流れる音楽はすべてピアノ伴奏で、サイレント映画であることを考えるとおそらく後から付けたものだろうが、バッハやムソルグスキーらの音楽を断片的に使って、映像を補う役割を十分に果たしていた。
 演出については、ムルナウの実力を窺うことができるもので、きわめて質が高いと言える。ムルナウは、この映画を撮ってからアメリカに移った(その後アメリカで事故死)ので、ドイツ製のムルナウ映画はこれが最後らしい。
 ムルナウ映画の常連、エミール・ヤニングスもメフィストフェレスとして怪演している。この映画でのヤニングスのイメージは『タルチュフ』に近く、『最後の人』や『嘆きの天使』のイメージとはかなり違う(同一人物とは思えないんだな)。
 僕が今回見た版はフィルムの状態が非常に良いもので、ノイズもほとんどなく、まったく古さを感じさせない。よくこれだけきれいな状態で残っていたなというくらいのレベルであった(僕はCSの放送で見たんで、今流通しているDVD版と同じバージョンかどうかはわからない)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『フォーゲルエート城(映画)』
竹林軒出張所『吸血鬼ノスフェラトゥ(映画)』
竹林軒出張所『タルチュフ(映画)』
竹林軒出張所『ファントム(映画)』

by chikurinken | 2012-12-15 08:59 | 映画
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