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竹林軒出張所

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『スペイン危機を生きる』(ドキュメンタリー)

スペイン危機を生きる 〜住まいを求めて連帯する市民たち〜
(2012年・NHK)
NHK-BS1 ドキュメンタリーWAVE

『スペイン危機を生きる』(ドキュメンタリー)_b0189364_9122649.jpg 財政危機に揺れるスペインで、ローン滞納によって家を奪われ放り出される人々を追い、同時にスペインの状況をあぶり出すドキュメンタリー。
 スペインでは、1999年のユーロ導入以来、独仏を中心とする投資活動が活発になり、ユーロが大量に流入してきて好景気に沸いた。これにあわせて地価や住宅価格が上昇し、建設ラッシュ、住宅購入ラッシュが始まって、バブルの状態になる。だが、中身の伴わないバブルがいつかははじけるというのは日本人の我々にとって周知の事実で、当然のごとく2007年に不動産価格が一気に暴落し、バブルが崩壊する。これに伴い一気に不景気になって、失業率も上昇する。またユーロ圏の公定歩合上昇に伴って金利も急上昇したため、不動産購入者に莫大な利子が重荷となってのしかかりローン破綻が後を絶たなくなった。ローン破綻者は銀行から立ち退きを迫られ、やがては強制退去ということになる。こうして街には家を無くした人々が大量にあふれることになった。このうちの多くは、家を取り上げられただけでなく、ローンの残り部分も払わされることになり、ものはないのに借金の取り立てだけが続くという状況になる。
 一方、銀行も莫大な不良債権を抱え、破綻寸前の状況になっている。問題をかかえた銀行は14行にものぼり、独仏は特にスペイン国内で相当額を投資しているため、スペインが財政破綻すると甚大な影響を被ることになる。そのためEUは、スペインの財政支援に乗り出す。手始めにやったのは銀行に公的資金を注入することで、こうしてスペインの財政破綻の阻止に一定の道筋が付けられることになった。
 だが、家は取り上げられしかも借金も強引に取り立てられている庶民にとっては、このような状況はまったく納得できない。銀行だけが良い目を見ているとしか見えない。こうして、ローン破綻で追い込まれた人々は連帯して銀行と闘うことになった。連帯は数万人規模にもなり、銀行と直接交渉することで借金を帳消しにさせた人々も現れはじめる。同時にかれらは行政に対しても、安価な公営住宅の提供、金銭的な支援を求めて交渉を続けるなど、運動として広がりを持つようになる。
 このドキュメンタリーは、連帯する人々に視点をあわせながら、こういったスペインの状況をレポートするもので、ニュースなどではなかなか伝わってこないスペインの状況が、スペインの市民目線で伝えられる。バブル破綻後の状況は90年代の日本の状況にも似ており、スペイン危機の状況がミクロレベルでよくわかる。前に読んだ本によると、「自然エネルギーへの補助金が原因でスペインが財政破綻した」みたいなことが書かれていてホンマかいなと思ったことがあるが(竹林軒出張所『脱原発。天然ガス発電へ(本)』参照)、やはりあれは眉唾情報だったわけだ。自分の目と耳、感性を駆使して情報を選別しなければならないとあらためて感じた次第である。
 ともかく45分間のドキュメンタリーでこれだけの状況を伝えるだけでなく、追いつめられながらも立ち上がる市民の姿を捉えることができており、優れたドキュメンタリーに仕上がっていた。外れが多いと思っていた『ドキュメンタリーWAVE』だが、これはクリーンヒットであった。今後にも期待したいと思う。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『ユーロ危機 欧州統合の理想と現実(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“トロイカ”の功罪(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『脱原発。天然ガス発電へ(本)』
by chikurinken | 2012-12-03 09:13 | ドキュメンタリー
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