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竹林軒出張所

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『六ヶ所村ラプソディー』(映画)

六ヶ所村ラプソディー(2006年・グループ現代)
監督:鎌仲ひとみ
音楽:津軽三味線奏者 倭
出演:斑目春樹、小出裕章、土本典昭(ドキュメンタリー)

b0189364_7551421.jpg 核再処理工場が建設された青森県六ヶ所村の現状(といっても2006年の段階だが)を紹介するドキュメンタリー。
 六ヶ所村の核再処理工場は、1980年代に着工が決まり、2004年に約2兆円もの費用をかけて建設された。その間、漁民を中心として反対運動もあったが、結局反対陣営が切り崩されて現在に至る。現在反対を表明している人々は少なくなって、変わり者扱いされ、「アカ」などと呼ばれることもあるらしい。
 基本的には核再処理工場に対して反対の立場を取っている映画だが、一方で積極的賛成派の人々にも話を聞いている。そのため声高に反対を表明するのではなく、淡々と現状を描写するという表現になっている。監督自身、映画の中で推進派の人々を糾弾するような心境になれないと語っているが、そのことがこの映画のスタンスを物語っている。
 とは言え、冷静に考えると、核再処理工場にプラス面はほとんどないわけで、どうしてもネガティブな立場になるのは当然と言えば当然。実際、推進派の人々がよく口にする「雇用を生みだす」という理屈も、結局はせいぜい原発労働者、ひいては内部被曝予備軍を生みだすだけで、「雇用を生みだす」という実態とはかけ離れている。それに一方で、地元の農業と漁業を壊滅させる可能性が非常に高いわけで(実際漁業は壊滅しているようだ)、そうすると「雇用をなくす」作用も大きいことになる。原発労働者にしても、一定量被曝してしまうと、労働力として使い物にならなくなるため、いずれは使い捨てにされるのがオチである。結局、原子力施設は地域社会を徹底的に破壊し尽くすことになるんじゃないだろうか、などとこの映画を見ながら考えていた。映画では農業従事者にスポットが当てられているため、雇用を奪われる立場で語られる言葉が多かった。
 この映画では、六ヶ所村だけでなく、イギリスのセラフィールド(核再処理工場がある)の現状も紹介されるが、これを見ると、将来の六ヶ所村の有り様まで想像できる。核再処理工場が地域にどういう惨状を生みだすかがよくわかる。
 ただいずれにしても、核再処理工場は高速増殖炉がなければ意味がないのであって、しかも高速増殖炉の実現性が困難な現状を鑑みると、そもそも核再処理工場自体必要ないということになる。結局は2兆円も費やして研究者のための巨大な玩具を作ったようなもので、雇用をうむ効果を目指すんだったらもっともっと効率的な方法もあるはずだ。そもそも2兆円も予算があるんなら、変なものを作ったりせずにそのまま村民にばらまいたとしても1億円ずつくらい行き渡るんじゃないだろうか……などということもつらつら考えた。
 声高な主張はなくとも、現状を示されるだけでいろいろなことを考える材料になる。そういう意味でも啓蒙の映画なんだろうなと思う。個人的には、賛成派の人々が3・11以降どういうふうに考えるようになったか興味深いところである。
 なお、『ある機関助士』の土本典昭、『隠される原子力・核の真実』の小出裕章もインタビューを受ける側として登場している。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『“核のごみ”に揺れる村(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場(本)』
竹林軒出張所『核燃料サイクル 半世紀の軌跡(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2012-11-14 07:55 | 映画
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