異人たちとの夏
(1988年・松竹)
監督:大林宣彦
原作:山田太一
脚本:市川森一
出演:風間杜夫、秋吉久美子、片岡鶴太郎、名取裕子、永島敏行

原作は山田太一の同名小説。主人公がシナリオ・ライターで、しかも若いときに両親と死に別れたということになっているため、多分に本人の自伝的要素も入っていると思われる。ちなみに山田太一自身は、幼少時に母を亡くしている。父も若い頃は中華料理屋をやっていたということで、映画に登場する父(片岡鶴太郎)の寿司職人に通じる部分がある。
ストーリーは、かつて死去した両親に遭遇するというもので、怪談とも言えるが、実際、死んだ肉親や死んだ友人なら幽霊でも良いからもう一度会って話をしたいと思うことがあり、必ずしも「幽霊=恐怖」という図式にはならない。そういう点でこの映画にも共感できるが、別の要素の怪談も出てきて、正直この辺は必要だったんだろうかと思う。2つのエピソードが分離している上、それに最後の方はちょっと悪趣味になって、演出にもシナリオにも疑問符がつく。山田太一がシナリオも書いたら良かったのにと思うのは僕だけか。
本多猪四郎、竹内力、高橋幸宏、桂米丸らが特別出演している他、入江若葉、峰岸徹、林泰文ら大林映画の常連も登場。演出が安っぽかったり、変な仕掛けを施していたりするのもいかにも大林映画で、良きにつけ悪しきにつけ大林色が出た映画である。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『廃市(映画)』竹林軒出張所『さびしんぼう(映画)』竹林軒出張所『空也上人がいた(本)』