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竹林軒出張所

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『いま助けてほしい 息子介護の時代』(ドキュメンタリー)

いま助けてほしい 息子介護の時代(2012年・テレビ東京)
テレビ東京 ザ・ドキュメンタリー

『いま助けてほしい 息子介護の時代』(ドキュメンタリー)_b0189364_8816.jpg 最近とみに増えているという、息子による親の介護をテーマにしたドキュメンタリー。
 親が突然アルツハイマー病を発症すると、誰かが面倒を見なければならなくなる。従来は「嫁」がやるケースが多かったが、最近では「息子」がこれに当たるケースが多くなっているという。で、息子が親の介護をするとどうなるかというと、職を辞さなければならなくなったりするため、介護の肉体的・精神的負担に加え、社会との隔絶感も生じてくる。こういったことすべてが介護者の葛藤となって、介護者を苦しめる。
 このドキュメンタリーの中心は、介護ライター、野田明宏氏の介護現場であるが、10年もの長期に渡って介護を続けてきた野田氏の口から、こういう感情が率直に語られる。この方、カメラの前でもあまりに率直に語るんで、カメラを通じてもその魅力が伝わってくるんだが、あまりに強烈な個性を発揮しているため、この人の映像を見ているとドキュメンタリーというよりドラマを見ているような錯覚にさえ陥る。この人の人間性をカメラでバッチリ捉えたスタッフも大したもんである。
 番組では、野田氏以外にも2件の息子介護のケースが紹介され、そのうち1件は母親を手にかけてしまったという悲惨なケースで、見ていて非常につらくなる。
 自分のキャリアをなげうって親の介護に自ら取り組むという、言ってみれば見上げた人達であるにもかかわらず、社会的には非常に困難な立場に追い込まれているという現実がある。こういう人達を救済するシステムが行政や社会にあってしかるべきではないかとも思うが、金(保険料)は取っても基本的に本人任せという態度は今も昔も変わらないようである。行政に代わって自ら介護に取り組んでいるんだから、最低限、生活保障というかしかるべき報酬を支払うべきではないかと思ったりする。そういうことをいろいろ考えさせられたドキュメンタリーであった。
 今回、僕の地域ではこの番組、夜中に放送された(東京では昼間)が、本当のところ、こういった秀作ドキュメンタリーはゴールデンとかプライムとか大勢の人が目にする時間帯に放送していただきたいものなのだ。なんだったら「NHKスペシャル」枠で……などとも思ってしまう(無理だろうけど)。結局のところほとんどの人が目にすることもなく、その存在すら気付かれることなく、ひっそりと消えていくことになるんだろうが、何とももったいないと思う。秀作番組をオープンに放送するようなチャンネルがあっても良いんじゃないかなどと、現行の放送のあり方にまで思いを馳せたのであった。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『野田明宏先生のファンの皆様へ』
竹林軒出張所『徘徊 ママリン87歳の夏(映画)』
竹林軒出張所『毎日がアルツハイマー(映画)』
竹林軒出張所『ぼけますから、よろしくお願いします。(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『へろへろ(本)』
竹林軒出張所『認知症の第一人者が認知症になった(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『いらだちと幸せと(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2012-10-24 08:08 | ドキュメンタリー
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