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竹林軒出張所

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『京都 冷泉家の八百年』(ドキュメンタリー)

京都 冷泉家の八百年
〜和歌の心、日本の美を守り伝えて〜(2003年・NHK)
NHK-BS2 プレミアムアーカイブス

『京都 冷泉家の八百年』(ドキュメンタリー)_b0189364_7234876.jpg 京都御苑のすぐ北にある今出川通りを通って同志社大学当たりにさしかかると、同志社の明治モダンな建物の中に大きな和風の古い門がひっそりと建っていて、一体何の施設だろうと感じていたものだが、実は冷泉家の屋敷だそうな。冷泉家というのは、藤原俊成、定家に始まる和歌の家元だそうで、この屋敷は平安期に通じるような寝殿造りになっているらしい。そしてその冷泉家では、今でも平安時代から受け継がれる行事が粛々と営まれている。このドキュメンタリーは、冷泉家とその行事を1年に渡って追い続け、その在りようを映像記録として残すというもので、平安時代の宮廷文化さながらの貴重な映像が大量に出てくる。
 明治維新で天皇家が京都から東京に移ったとき、それまで朝廷と関わりのあった公家もほとんどが東京に移ったが、冷泉家は京都にそのまま残ることになった。結果として関東大震災や空襲の被害を受けることがなかったため、平安・鎌倉期の文化遺産もそのまま残されることになった。そういうわけで冷泉家文庫には貴重な文化財(国宝5件、重要文化財47件を含む)が今でも引き継がれている。こういった文化財の他、さまざまな行事の無形文化財も冷泉家によって大切に保管されているということで、そういったものがこのドキュメンタリーで紹介されていく。さまざまな行事は、四季の風景の中で捉えられていてどれも美しい。平安時代の貴族の生活もかくやと思わせるような、ちょっとタイムスリップしたような感覚を持つ。
 で、こういった儀式は確かにすばらしい伝統行事なのだが、一方でさぞかし金がかかるのではないかというような庶民感覚が、見ているこちら側に起こってくる。だがその辺もきちんと説明があって、何でも財団があり、そこが管理しているということなんだそうだ(詳細はわからないが)。
 平安時代からそのまま移ってきたような一角(そしてその文化活動)が今でも京都に残っているということ自体驚きで、それをこうして映像として残し、一般公開するというのも非常に貴重な活動と言える。大変地味なドキュメンタリーではあったが、価値は非常に高いと思う。
 なお、このドキュメンタリーは2時間近くの番組だったが、同時期にNHKスペシャルでも1時間弱に編集されたものが放送されたようである。もしかしたらいずれDVD化されるかも知れない。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『平安京はいらなかった(本)』

by chikurinken | 2012-10-10 07:25 | ドキュメンタリー
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