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竹林軒出張所

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『初恋・地獄篇』(映画)

初恋・地獄篇(1968年・ATG=羽仁プロ)
監督:羽仁進
脚本:寺山修司、羽仁進
出演:高橋章夫、石井くに子、満井幸治、福田知子、湯浅実

b0189364_8442693.jpg これも羽仁進のドキュメンタリー・タッチの映画。
 映像は即興的で、街の雑踏の音なんかも生で入っていてまさしくドキュメンタリー・タッチだが、あれやこれやのイメージ映像や街の風景も雑多に取り込まれそのまま垂れ流されていて、少しシンドイ映画である。当時の風俗もそのまま取り込んでいて、SMクラブやヌード・クラブ、連れ込み旅館なんかも普通に出てくる。全体にアングラ色が漂い、マニア向けみたいな映画である。同じ頃のATG作品『あらかじめ失われた恋人たちよ』なんかに雰囲気が近い。
 僕は前半、用事をやりながら見ていたのでそれほど苦痛に感じなかったが、劇場で2時間この映画を見せつけられた日には辟易していただろうと思う。『あらかじめ失われた恋人たちよ』は劇場で見たんだがまさにそうで、最初の10分見たところでもうすでにやめたいと思いながらも、結局全部見てしまい、残りの時間は拷問のような苦痛の時間を過ごしたのだった。同時代に見ていればまた別の感傷もあるんだろうが。こういった類の整理されていない雑然とした映画は、パッケージとして人に見せるのはいかがなものかと個人的には思っていて、そういうわけでこの類の映画についてはまず最初に嫌悪感を持つのだな。確かに現実的な映像に思考部分の映像を同列で挿入するという手法は面白いんだが、そういうのもきちんと整理されていてこそだと思っている。見る側としては、閉じた空間(劇場)で一定の時間見続ける分には、自主映画みたいな完成度の低い映画は結構つらいものである。この映画も、(羽仁進の他の映画と同様)出ている役者はほとんどが素人で、ろくに演技をしていない人も多く(たぶんそういう意図で演出したんだろうが)一方でちゃんと演技をしている人もいるとなると、映画全体としてバラバラで拙い印象しか残らない。印象としてはほとんど自主映画に近く、実際に劇中に自主映画が出てくるんだが、逆にそちらと整合性がとれてしまっている。
 ストーリーも一応ちゃんとしたものがあるんだが、風俗の描写ばかりが続いてなかなか先に進まない。終わりの20分間くらいで一気に展開するんだが、何となくこうなるんじゃないかという方向に話が進んでいって、結局予想どおりの結末に落ち着いた。意外性を狙ったような映像が多い割にはありきたりなストーリーで、そういうところも浅薄さを感じる部分である。
 キャストは知らない素人俳優ばかりで特筆することもないが、『中学生日記』の風間先生(湯浅実)が、変な趣味を持つ紳士として出ていたのはちょっと異色で面白かった。
★★

参考:
竹林軒出張所『不良少年(映画)』
竹林軒出張所『彼女と彼(映画)』
竹林軒出張所『書を捨てよ町へ出よう(映画)』
竹林軒出張所『ボクサー(映画)』

by chikurinken | 2012-10-08 08:44 | 映画
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