処女の泉(1960年・スウェーデン)
監督:イングマール・ベルイマン
原作:ウルラ・イザクソン
脚本:ウルラ・イザクソン
出演:マックス・フォン・シドー、ビルギッタ・ペテルスン、グンネル・リンドブロム、ビルギッタ・ヴァルベルイ
『処女の泉』というタイトルだが、決してポルノ映画ではない。スウェーデンの巨匠、イングマール・ベルイマンの出世作にして傑作の誉れ高い名作である。
ベルイマンの映画といえば、これまで『秋のソナタ』とか『リハーサルの後で』とか、非常に退屈な会話劇しか見たことがなかったので、こういったホラーまがいの映画があるとは思わなかった。「ホラーまがい」というのは少し言いすぎかも知れないが、全編を覆う緊迫感は尋常ではない。ストーリーは比較的単純で、どこかに伝わるキリスト教の伝説を基にしているんじゃないかというような話である。だが、伝説みたいな話でも、映像としてリアリティをもって説き起こすと、こういった殺伐としたものになってしまうということがわかる。とにかく迫力がすごい。またモノクロの映像も、エイゼンシュテインの映画を彷彿させるようなギラギラした調子で、強いコントラストが緊迫感を生みだすことに貢献している。
90分弱の比較的短い映画だが、当時世界中で評価されたということがよくわかる、傑作の名に恥じない名品であった。
第33回アカデミー賞外国語映画賞、第13回カンヌ国際映画祭特別賞受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『野いちご(映画)』竹林軒出張所『不良少女モニカ(映画)』竹林軒出張所『奇跡の丘(映画)』