アフガニスタン NATO軍司令官の憂鬱
(2011年・ノルウェーNRK)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー シリーズ「ビンラディン後の中東」
アフガニスタンには現在もNATO軍が駐留していて治安維持に当たっているが、2014年に全面撤退する予定だという。それを前にして、警察を含む現地の行政に任務の引き継ぎを行おうとしているが、アフガンの行政当局のやる気のなさのせいか、はたまた反体制側であるタリバンの攻勢のせいか、なかなか仕事の引き継ぎが進まない。そういう現状を報告するドキュメンタリー。
ナレーションはまったくなく、静かな進行のドキュメンタリーであるが、爆発音や銃声なども入っていて、見ていても緊張感を強いられる。決してのどかという雰囲気ではない。製作はノルウェーの製作局だが、これには、NATO軍の司令官がノルウェー人だからという理由がある。実際アフガン駐留NATO軍にはノルウェー軍部隊が入っており、犠牲者も出ている。ノルウェーにとっては他人事ですまされないのだろう。兵士たちにしても早く国に帰りたいというのが本音なんじゃないかと思う。
だが、アフガンの現状は決して楽観できない。政権側は市民に人気がないし、タリバンは相変わらず自爆テロを繰り返す。一部の地域では内戦状態がいまだに続いており、選挙すらきちんと実施できない。このドキュメンタリーに映る現地の当局者たちは、NATO軍に対する不満ばかりを口にし、なかなか作戦を実行しない。どこか他人事のような印象すら受ける。この辺は多分にNATO軍側の見方が番組に反映されているんだろうと思う。現地の彼らにしたところで、タリバンから命を狙われる身である。実際、番組に登場した「知事の側近」は、(彼を狙った)自爆テロで重症を負っている。ともかく政権移譲はうまく進まないわ、タリバンの攻勢は許すわで、これからのアフガニスタンがどうなるか、予断を許さない状況であることはよくわかった。まさに袋小路に入っているような状況で、打開策が見つかりそうもないという印象だった。
★★★☆