メリィ・ウィドウ(1934年・米)
監督:エルンスト・ルビッチ
原作:ヴィクター・レオン、レオ・ステイン
脚本:アーネスト・ヴァホダ、サムソン・ラファエルソン
出演:モーリス・シュヴァリエ、ジャネット・マクドナルド、ウナ・マーケル
フランツ・レハールのオペレッタ『メリー・ウィドウ』が原作の映画。オペレッタの『メリー・ウィドウ』は20世紀前半にアメリカでも大変人気を博したらしく、そのためもありアメリカでは都合3回映画化されたらしい。その3本の中でもっとも質が高いとされているのが、このルビッチが監督した第2作目。
ストーリーはオペレッタ版とおおむね同じだが、設定が若干変わっている。そのために主人公の2人、ハンナとダニロ伯爵の関係性も少し違っている。元のオペレッタでは、本音と建て前の間でゆらぐ恋の駆け引きみたいな部分が割合面白かったんで、そこが別の要素にすり替わっているのは少々ガッカリの部分である。しかもすり替わった要素が陳腐だったりするんでガッカリ感もひとしお。
ストーリーについては、オペレッタ版のメインである大使館の場面の前後に、母国でのエピソードとその後のエピソードが付け加えられているが、元々のストーリーに則っている前の部分はともかく、後の部分はいかにもアメリカ喜劇といった感じで実にバカバカしい。当時のアメリカ人はこういうのを喜んだのかも知れないが、ちょっと品性に欠けるような部分である。
小粋な喜劇の名匠と言われるルビッチだけに、全編喜劇的要素が散りばめられていてそこそこ楽しめるが、やりすぎと感じられる部分もあって、そういう部分はやはり笑えない。オペレッタをハリウッド・コメディにそつなく移植してはいるが、変な後味が残る映画だった。率直に言って原作のストーリーをそのまま使った方が良かったんじゃないかと思う。音楽については元のオペレッタの曲をあちこちに巧みに配していて、うまい使い方をしていると思った。
★★★参考:
竹林軒出張所『喜歌劇メリー・ウィドウ(放送)』竹林軒出張所『天国は待ってくれる(映画)』竹林軒出張所『ニノチカ(映画)』