アフター・ザ・レッド 連合赤軍 兵士たちの40年
朝山実著
角川書店
40年前、連合赤軍という学生グループが起こした「あさま山荘」人質たてこもり事件は、終日テレビ中継されたこともあり、当時小学生だった僕にも大変な衝撃を残した。しかもその後、この連合赤軍が、仲間のメンバーを「総括」という名目で大勢殺害していたことが判明し、結局これが新左翼運動が退潮するきっかけになった。
まったく知らなかったが、その連合赤軍事件が現在マンガ化されているという。
『聖』もそうだったが、最近のマンガはいろいろな素材をネタにするんだなーと思う。ちなみにそのマンガは、山本直樹の『レッド』。で、連合赤軍のメンバーのその後の軌跡を探るのが、本書『アフター・ザ・レッド』。「その後のレッド」ということで、当然山本直樹のマンガを意識したものである。
本書は、前澤虎義、
加藤倫教、
植垣康博、雪野建作の4人の元メンバーにインタビューしたインタビュー集で、このうち加藤倫教は、あさま山荘の籠城事件に参加していた。他は、山岳ベース(仲間を総括した舞台になった)から脱走した人(前澤)、それに先立つ銃砲店襲撃事件で逮捕された人(雪野)、山岳ベースで総括されそうになった人(植垣)で、『レッド』の登場人物になっている人もいる(らしい)。それぞれ刑期を無事終え、現在はシャバにいて職業人として普通に生活している。本書では、そのあたりの経歴も紹介され、それが一番面白い部分である。連合赤軍事件についてはそれぞれの口からもちろん語られるが、僕自身が連合赤軍の事件を大雑把にしか把握していなかったため、わかりにくい箇所が多かったのも事実。たとえば坂口とか坂東とかいう名前が出てきても(聞き覚えはあるが)もうひとつピンと来ない。あの事件のいきさつをよく復習してから読んだらもっとわかりやすかったかも知れない。
インタビューの内容は割合うまく採録されているので、インタビューに応じた人たちの態度や性格までよく伝わってきてわかりやすい。特に前澤氏と植垣氏については明るい性格が伝わってきて、気持ち良く話を聞けているという印象だった。
あの事件や当時の運動に対する見方もそれぞれで違っており、たとえば前澤氏は、革命左派のリーダー格であった永田洋子について実にシビアに見ているが、そのことであの事件の動機が客観的に理解しやすくなっているという側面もある。ちなみに、連合赤軍というのは、革命左派(日本共産党革命左派)と赤軍派(共産主義者同盟赤軍派)が合体したもので、どちらも当時少数派グループだったようだ。それぞれの組織で性格が違っていて、そのあたりも前澤氏によって語られるが、その異なる性格のグループが1つになることで悪い方の相乗効果が出て、それが暴走につながったということらしい。4人に共通するのは、彼らが参加した新左翼運動自体は青春の1ページみたいな側面があるということで、暴走したことについてはそれぞれに違った思いがある。
今まで俯瞰でしか捉えられなかった連合赤軍事件が、内側の視点から捉えられるようになるという点で、興味深い1冊になっている。なお、植垣氏、加藤氏にはそれぞれ著書があるし、かつての連合赤軍メンバーにも著書を出している人が多い。またインタビューに登場する4人のうち3人は「連合赤軍事件の全体像を残す会」のメンバーで、現在あの事件の記録を残す活動をしている。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『連合赤軍 終わりなき旅(ドキュメンタリー)』