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竹林軒出張所

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『少年テロリストたちの“夜明け”』(ドキュメンタリー)

少年テロリストたちの“夜明け” 〜更生施設の18か月〜
(2011年・英パFirst Take Films)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー「シリーズ ビンラディン後の中東」

『少年テロリストたちの“夜明け”』(ドキュメンタリー)_b0189364_8104422.jpg パキスタン北部に「Sabaoon」(夜明け)という名前の更正施設がある。この施設では、強制的または自主的にタリバンに入り、あるいは自爆テロ要員、あるいは戦闘員として活動していた少年たちを更正させ、社会復帰させるという活動をしている。
 ある意味、日本で言う少年鑑別所みたいな施設であるが、悲惨な光景を目にしてきた少年たちのリハビリ施設としての役割が大きい。タリバンの歪んだイスラム教解釈を矯正し、普通の少年と同じように勉強をさせることで、少しずつ人間性を取り戻させる。同時に、カウンセラーが常時彼らの話を聞き、それぞれの少年たちの矯正状態を探りながら、社会復帰のタイミングを模索していく。
 タリバンに強制的に拉致された少年たちは元々タリバンに対してシンパシーを感じているわけではないが、中には自主的にタリバンに参加した少年もいるという。こういった少年は、矯正が比較的難しいらしく、「危険度が高い」という位置づけで特別に配慮されることになる。
 この施設を出た後、タリバンの報復や拉致を受けることも考えられるため、復帰に際しては細心の注意が払われる。数年前までパキスタン北部をタリバンが支配していたらしいが(武装解除を条件にパキスタン政府が支配を認めていたという)、その後、政府もタリバン掃討作戦に乗り出し、タリバンを一掃したらしい。もちろん残党はまだ残っているわけで、こういった人間が何をしでかすかはわからないわけだ。現にこの施設でイスラム教を教えていた高名な宗教学者も暗殺されている(上の写真で背中が写っている右の人物)。常に緊張を孕んだ社会の厳しさ、難しさを垣間見せられるような、ちょっとハードなドキュメンタリーであった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『タリバンに売られた娘(ドキュメンタリー)』
竹林軒『圧倒的な迫力、アフガン版ネオリアリズモ』
竹林軒出張所『祖国に幸せを(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『わたしが明日殺されたら(本)』
竹林軒出張所『アフガニスタンの少女、日本に生きる(本)』
by chikurinken | 2012-09-10 08:11 | ドキュメンタリー
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