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竹林軒出張所

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『タンポポ』(映画)

タンポポ(1985年・伊丹プロ)
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
出演:山崎努、宮本信子、役所広司、渡辺謙、加藤嘉、安岡力也、大滝秀治、桜金造、津川雅彦

b0189364_751422.jpg 伊丹十三が監督した作品としては『お葬式』に次ぐ二作目で、伊丹十三の趣味全開で、随分好き勝手にやっている映画である。伊丹十三の食へのこだわりは、彼のエッセイ、『日本世間噺体系』『小説より奇なり』でも窺えるが、そういうこだわりが全編に散りばめられているのがこの映画。さまざまな映画へのオマージュみたいなシーンもあちこちに見受けられ(『8 1/2』、『ベニスに死す』、『恐怖の報酬』など)、そもそもストーリー自体が『シェーン』である。方々を渡り歩いている男が、あるラーメン屋を立て直すというストーリーだが、ストーリー以外に食についてのさまざまなエピソードが挿入されていて、そのエピソードをちょっとした仕掛けでつなげていくという斬新な方法が使われている。ルイス・ブニュエルの映画で似たような手法を見たことがあるが、そう考えるとブニュエルへのオマージュにもなっているのかも知れない。
 エピソードは10本あるが少し毛色の変わったものも多く、やや悪趣味みたいなものもある。とにかく伊丹十三がやりたい放題で撮ったシーンという感じで、このあたり、エッセイ『小説より奇なり』と共通する部分である。
 また、登場するキャストも少し変わっていて、映画監督の藤田敏八、のっぽさんの高見映、音楽担当の村井邦彦、それに大友柳太郎まで出ている。ベテランの大滝秀治は伊丹映画にはよく登場するが、この映画では逆さにされたり、口に掃除機の先端を突っ込まれたりとそれこそやりたい放題やられていて、こういうことをやらせる伊丹十三もすごいが、難なくこなしている秀治も大したもんである。
 音楽はリストやマーラーが使われていて、もちろんそれぞれメジャーな作品であるが、BGMで使われることがあまりないような部分が使われていてちょっと珍しいと思った。こういった部分にも伊丹十三の遊び心みたいなものが感じられる。
 私の記憶が確かならば、この映画の発表当時、世間の評価は前作の『お葬式』ほど高くなくて、割合地味な作みたいに受け取られていた記憶があるが、いまやこちらの方がメジャーになっているんじゃないかと思うような扱いである。YouTubeでも部分部分(いろいろなエピソード)がアップされているし、特に国際的な評価が高いようだ。あるフランス人がこの映画を見て日本に関心を持ち移住したという話も聞いたことがある。実際僕が見たYouTubeの映像には英語字幕が付いていた。非常にユニークで毛色の変わった映画であることは確かである。ちなみに見るのは今回で3回目。
★★★☆

参考:
YouTube『How to make an omurice (from Tampopo)』(伝説のオムライス)
YouTube『Tampopo - ramen master』(正しいラーメンの食べ方)
竹林軒出張所『シェーン(映画)』
竹林軒出張所『小説より奇なり(本)』
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竹林軒出張所『大病人(映画)』

追記:伊丹十三といえば、伝説の映画監督・脚本家の伊丹万作の子息で、元々は役者である(それ以前はグラフィック・デザイナーだったそうで)。映画を撮り始めたのは1984年からだが、それ以前から彼が書くエッセイも一部で高く評価されていた。『愛川欽也の探検レストラン』という番組では食へのこだわりまで披露していて(最高の駅弁を作るという企画が印象的であった。ちなみにその駅弁の名前は『元気甲斐』)、映画監督として売り出す前から多方面で才能を発揮していた。実はこの映画のモデルになった企画も『探検レストラン』にあったそうだ(Wikipedia情報。これについては記憶にない)。エンディングロールに「企画資料協力 愛川欽也の「探検レストラン」」と出るのはそのためか。
by chikurinken | 2012-08-28 07:52 | 映画
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