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竹林軒出張所

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『勇気ある証言者 ボスニア』(ドキュメンタリー)

勇気ある証言者 ボスニア
(2011年・米Thirteen/Fork Films)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

『勇気ある証言者 ボスニア』(ドキュメンタリー)_b0189364_918412.jpg 1990年代に起こったユーゴスラビア紛争では、歪んだナショナリズムが引き起こす悲劇を嫌というほど見せつけられたが、それでもまだ耳にしていない、目にしていない悲劇がいくらでもあるようだ。このドキュメンタリーで紹介されていたのは集団レイプ事件で、セルビア人によりムスリム(イスラム系住民)女性に対して組織的なレイプが行われたという。こういった事件の根底に流れるのは思い込みによる憎悪であるが、平和の象徴としての性行為が暴力と化してしまうのは、毎度のことながらいたたまれない気持ちになる。
 ともかく1992年にボスニアのフォチャという市でその事件は起こった。この紛争が起こる前は、民族に関係なく接していた隣人同士だったが、ナショナリズムが勃興し始めると、セルビア人武装組織によってムスリムに対し攻撃が加えられるようになった。かつての知人・友人であっても、殺害の対象から外されることはなかったという。殺害を免れた女性たちは、スポーツ施設や学校などに集められて、そこで集団で執拗にレイプが行われたというのである。
 加害者は永らく処罰されることがなかったが、この事件が明るみに出て、責任者3人が国際司法裁判所で裁かれることになる。そして被害者が証人として出席した。顔が見えないようにした上声にも加工を加えたが、報復を恐れて証言を拒んでいく証人が続出する。それでも勇気を出して証言した女性たちもいる。彼女たちの具体的な証言もあり、結局3人の容疑者に「人道に対する罪」による有罪判決が出た。国際司法裁判所で性犯罪が裁かれたのはこれが初めてで、その後これが先例となり性犯罪も戦争犯罪として扱われるようになったという。それもこれもすべて果敢に証言した被害者女性の勇気のたまものというのがこのドキュメンタリーの主旨である。なお、このような事件はボスニア全土で起こったようで、2万人以上(一説では5万人以上)の被害者がいたという。
 その後、ある被害者女性の1人がフォチャに「レイプで苦しんだ女性たちの銘板」を立てようとしたが、セルビア人住民(多くの女性を含む)の抗議行動のために断念せざるを得なかった。過去にしっかりと向き合わないのは、古今東西同じということである。
 このドキュメンタリーでは、ボスニア紛争の映像なども交え、実際の法廷の映像、証言などで構成され、人間の愚行と悲劇があぶり出される。目が離せなくなるような構成で、テンポも良かった。
★★★☆
by chikurinken | 2012-07-30 09:19 | ドキュメンタリー
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