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竹林軒出張所

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『電球をめぐる陰謀』(ドキュメンタリー)

電球をめぐる陰謀
(2010年・仏Arte France/ArticleZ/西Media3.14)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
「シリーズ 消費社会はどこへ?」

『電球をめぐる陰謀』(ドキュメンタリー)_b0189364_811148.jpg 以前何かの書評で、家電製品が壊れるように作られていることを書いた本を見つけて読みたいと思っていたのだが、なにぶんタイトルを忘れてしまって、結局読むことができないでいる。そのため、今回このドキュメンタリーが放送されることを知って、非常に楽しみにしていた。
 家電製品にはあらかじめ一定の稼働期間が設定されており、その期間が過ぎると壊れるようにできているというのがこのドキュメンタリーの主旨で、まさしく件の本と同じ内容である。
 1925年頃、白熱電灯の寿命は2500時間に達しようとしていたが、寿命が長いと電球の需要がなくなり成長を維持できなくなるという考え方から、メーカー各社が集まり上限稼働時間を1000時間と設定し、それに違反すると罰金を徴収するというシステムが作られた(ポイボス・カルテルの1000時間寿命委員会)。そのためメーカーはそれぞれ創意工夫を重ね、耐用時間を短くするためのイノベーション(意図的な老朽化)に邁進したという。そしてこのような習慣は、他の電器業界にも踏襲されて今に至っているという。
 このドキュメンタリーでは、例としてインクジェット・プリンター(エプソン製)を取り上げていたが、なんと驚くことに一定の枚数(この機械では18000枚)をプリントしたら動作を停止させるEEPROMが組み込まれていた。メーカー側は、動作を停止したら、修理に応じるのではなく新しい機種を奨めるというアコギな商売をしているということなのだ。キヤノンで似たような話は聞いたことがあったが、エプソンまでそうだったとは。そしてこういう悪習が世界中の電気製品ではびこっているらしいのだ。アップルのiPodのリチウム電池が速く消耗する設計になっていたという話も紹介されていた。ちなみに当時(2004年)アップルは電池の交換に応じておらず、このために消耗した製品は買い換えなければならないということになる。これが元になって消費者側がアップルに対し集団訴訟を起こし、その後和解に至ったらしい。
『電球をめぐる陰謀』(ドキュメンタリー)_b0189364_8132390.jpg で、こういう成長のための戦略が何を生みだしているかというと、大量のゴミの生産につながっていくわけだ。しかもそのゴミのうちかなりの量がアフリカなどの途上国に送られ、かの地で大地を埋め尽くし汚染する結果になっている。こういう悪い循環を断ち切って、正常な消費活動を取り戻すべきだというのがこのドキュメンタリーの主張である。なかなか面白いテーマなので、このテーマについては今後興味を持って接していきたいと思った。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『LED電球導入記……エコのためかエゴのためか』
by chikurinken | 2012-07-18 08:12 | ドキュメンタリー
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