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竹林軒出張所

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『オヤジたちの“ウォーターボーイズ”』(ドキュメンタリー)

オヤジたちの“ウォーターボーイズ”(2010年・スウェーデンAmp Film/英Met Film)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_955648.jpg 良質の劇映画みたいなドキュメンタリー。なんせサブプロットまである。
 主役はスウェーデンでシンクロナイズドスイミングに取り組む中高年の男たちで、まさしく『ウォーターボーイズ』みたいな話である。しかし、学生たちと違い、中高年ともなると皆いろいろな問題をかかえている。このドキュメンタリーの主人公はディランという男だが、彼は英国でテレビマンとして活躍していたが、そのキャリアを捨て妻の故郷のスウェーデンに移住してからというものろくな仕事にありつけず、ために収入も安定しない。自分の選択が誤っていたんではないかといつも自問自答している。
 かつてスウェーデン語の語学学校の教師から「スウェーデンで溶け込む鍵はクラブに入ること」と言われたということで、このデュランもご多分に漏れずクラブ活動を始める。それがシンクロというわけ。このクラブに集まってくる人間は、一見普通の中年男たちであるがそれぞれいろいろな問題をかかえており、それぞれに思うところがあるようだ。とは言うものの、練習にも時間どおり集まらないメンバーがいたり真剣に取り組んでいるとは言いがたいような雰囲気である。
b0189364_962696.jpg そういう中でかれらの雰囲気を一変させたのは、世界大会への参加を決意したことである(男子シンクロの世界大会というのが存在するらしい)。そのためコーチにも元スウェーデン代表という女性を招き、本格的に取り組むことになる。番組では世界大会出場、終了までの軌跡を追うが、メンバーのシンクロへの取り組み方が劇的に変わる上、意欲の向上に伴ってかれらが抱えている問題が少しずつ解消されてきたりするのも(そういう演出なんだろうが)とても興味深い。特に主人公のディランは当初、世界大会の遠征費の捻出にも困っていたが、高校で映画学を教えるという職を得ることができて、人生まで好転していく。
 なお、このドキュメンタリーはディランの視点で語られ、ディランの一人称でナレーションが入るが、実は製作しているのもこのディランなのである(ディラン・ウィリアムズ)。まさに私小説的ドキュメンタリーで、しかも構成が非常にしっかりしている。ストーリー(!)展開も実に巧みで、最初に書いたようにサブプロットまであって、そのまま劇映画になってしまいそうな話である。目標を持ったメンバーが変わっていく様も、当たり前のことながら非常に自然に描かれている。ストーリーとしては『ウォーターボーイズ』よりもよくできているんじゃないかと思うほどであった。ディラン・ウィリアムズという映像作家の実力に感心するところしきりである。ただ日本版のタイトルはいただけない(原題は『Men Who Swim』)。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ウォーターボーイズ(映画)』

by chikurinken | 2012-06-16 09:07 | ドキュメンタリー
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