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竹林軒出張所

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『血塗られた携帯電話』(ドキュメンタリー)

血塗られた携帯電話(2010年・デンマークKoncern TV&Film)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_8432880.jpg 携帯電話に使われる稀少金属タンタルの奪い合いがアフリカのコンゴで繰り広げられているという話はかつてNHKのドキュメンタリーでも放送されており、割合よく知られているところである。このドキュメンタリーで扱われる内容もこれと同様。コンゴ民主共和国内で、スズやコルタン(タンタルの原料)を巡ってさまざまな軍事組織(この中には政府軍も含まれる)が武力で争っており、結局はこういった金属で得られた収益が武器や兵器にまわることになって、最終的に殺戮や虐殺に利用されているということを訴える。
 このドキュメンタリーでは、スタッフ自らコンゴの採掘地域に潜入し、地下鉱山の採掘現場を撮影する。国連のスタッフによると、この地域は殺人が平気で行われるような地域で、身の安全は保証できない場所という。それだけにスタッフの意気込みが伝わってくる映像である。同時に現場の様子や現地の人々の声を拾うことにも成功している。労働者は、低賃金で重労働をさせられているにもかかわらず、賃金の多くは、軍事組織が税金として徴収している。しかも軍事組織による殺人や暴行も日常的に繰り広げられており、こういった労働者も被害に遭っているという。
 その後スタッフは、携帯電話(当時)最大手のノキアを訪問し、コンゴの稀少金属が使われているか問い詰めようとするが、メーカー側は木で鼻をくくった対応に終始する。製作者の主張は、少なくとも使用金属の原産地表示を行い、消費者が今の惨状について知ることができるようにすべきということだが、メーカーの広報担当者は原産地を調べることは不可能だと取り合わない。こういう突撃取材になると大体かみ合わないのは常で、製作者もそういうことはわかっているはずで、このノキアとのやりとりも何となく製作者側のアリバイ作りみたいな印象も受ける。なお、このドキュメンタリーが作られた後、アメリカで携帯電話の金属の原産地表示が義務付けられることになって、ノキアも全世界の機種でこれに従うことになったらしい。この辺が企業の論理ということになるんだろう。
 ベースは体を張った突撃取材で、王道を行くドキュメンタリーと言える。問題意識も高く、主張もはっきりしている上、途中スリリングで内容も濃く、見せることを意識した展開になっている。NHKのドキュメンタリーみたいに巧みな編集できれいにまとめる手法もあるが、突撃取材をベースにしたこういう見せ方もありだなと思った。
★★★☆
by chikurinken | 2012-06-08 08:44 | ドキュメンタリー
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