グランド・ホテル
(1932年・米)
監督:エドマンド・グールディング
原作:ヴィッキイ・バウム
脚本:ウィリアム・A・ドレイク
出演:グレタ・ガルボ、ジョン・バリモア、ジョーン・クロフォード、ウォーレス・ビアリー、ライオネル・バリモア

昔シナリオの先生から「主人公は1人じゃなきゃ映画として成立しない」と言われたことがあり、これについては十分納得していたが、しかし現実的にこの『グランド・ホテル』みたいに主人公クラスの人間が大勢出てくる映画も存在するわけだ。で、こういった構成(主人公が多い作品)は、この映画のタイトルからグランド・ホテル形式と呼ばれているんである。
この『グランド・ホテル』は古典中の古典映画であるが、見るのは今回が初めてということになる。序盤は主人公クラスの人間が大勢登場し、しかもグランド・ホテル内の雑多でにぎやかな雰囲気と相まってあまりまとまりがない印象である。やはり主人公が多いというのは問題があるよなあと思っていたが、これが見事に一点に収束していき、そしてスカッと終わらせる。非常に巧みな脚本であることがわかる。
結局のところ、主人公は大勢の人々ではなく、このホテル自体なのだと思えるようになる。つまりホテルに出入りする人々は、ホテルを演出する素材でしかない。このあたり、すべては登場人物によって2回に渡って語られる「グランド・ホテル、人が来ては去って行く、ただそれだけ」というセリフに集約されている。もちろん映画では人間ドラマを扱っているが、舞台こそ主役というわけだ。だから「主人公が1人」という命題はある意味で成立しているとも言える。
キャストも豪華であるが、やはりストーリーと脚本の見事さが最後まで印象に残る映画だった。ちなみに男爵役のジョン・バリモアと社長役のライオネル・バリモアは兄弟だそうで。
第5回アカデミー賞最優秀作品賞受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『椿姫(映画)』竹林軒出張所『ニノチカ(映画)』