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竹林軒出張所

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『わたしのペレストロイカ』(ドキュメンタリー)

わたしのペレストロイカ
(2010年・英米Red Square Productions / Bungalow Town Productions他)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_97162.jpg ソビエト体制下で幼少時代を過ごし、その後ソビエトの崩壊、資本主義体制への移行などを目の当たりにした人々に取材したドキュメンタリー。
 登場する人々は多くが同級生で、同じ激動の時代をくぐり抜けながらも、それぞれ独自の人生を送っている。各人の話をうまく編集しながら、時代背景を示す映像が挿入される。かれらの子ども時代の映像もふんだんに登場する。
 われわれにはソビエトは暗黒社会みたいな印象があるが、彼らに言わせると子ども時代は不幸に感じることはまったくなく毎日が楽しかったらしい。質素ではあっても、それなりに社会はうまく機能していたことが窺われる。その後、ゴルバチョフが登場して連邦体制は崩壊し、ロシア社会は混沌としてきた。市場からモノがなくなり、社会不安も増えてくる。社会が不安定になっても、人々はかれらなりに生活を送らなければならない。パンクロッカーになった者や教師になった者など各人各様である。クラス一の美人だった女性は、いまやシングルマザーで、アパート住まい、生活も苦しいらしい。インタビューを通じてそれぞれの人物に共感を感じるようになるが、かれらの来し方に接すると、一種の同窓会みたいな雰囲気さえ出てくる。成功した者も困窮している者もいて、これからも互いに何とかやっていこうよという気分になる。
 日本では安っぽい同窓会ドラマも多いが、この番組はドキュメンタリーでありながら、とってつけたようなドラマよりずっと質が高い上、見ていて面白いし、共感できる。背景を流れるのが激動の時代であっても、ミクロレベルではそれぞれの人生に収斂する。子どもの頃に同じ時期を同じ場で過ごした人々が、それぞれの人生に枝分かれしていき、ある一点でスナップショットとして互いにそれを披露する。それが同窓会であり、このドキュメンタリーはまさしくそういう構成になっている。国家の崩壊という特異な社会背景を抜きにしても、同窓会ドキュメンタリーとして非常に質が高い秀作であった。なおこのドキュメンタリーにはナレーションが一切なく、インタビューと映像を巧みにつなぐことで、庶民から見た歴史を描いているが、結果的に非常に大きな効果をもたらすことになっている。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史(8)〜(10)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『こうしてソ連邦は崩壊した(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『舞踏会の手帖(映画)』
竹林軒出張所『俺たちの旅 二十年目の選択(ドラマ)』

by chikurinken | 2012-05-25 09:07 | ドキュメンタリー
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