洋菓子店コアンドル
(2011年・『洋菓子店コアンドル』製作委員会)
監督:深川栄洋
脚本:深川栄洋、いながききよたか、前田こうこ
出演:江口洋介、蒼井優、戸田恵子、江口のりこ、尾上寛之、加賀まりこ

田舎からぼっと出の若者がひょんなことから高級洋菓子店に入りそのバイタリティだけで真のプロに成長していくという、割とありきたりなストーリー。また登場するエピソードも、かつて伝説のパティシエと呼ばれていたが事故がきっかけで菓子作りを辞めた男とか、大事なイベントを前に突然休業を余儀なくされる洋菓子店とか、こちらもきわめてありきたり。ありきたりなものが多く、シナリオに工夫がないという印象である。美味しそうなケーキがたくさん出て、これもやはり若い女性を当て込んだハナコ映画と見た(
竹林軒出張所『食堂かたつむり(映画)』参照)。
とは言うものの、映画自体はよくできており、演出やカメラワーク、全体を流れる穏やかな雰囲気など、実に巧みで、映画としての完成度は非常に高い。こういった映画が最近の日本映画には多く、ある意味、映画製作者としてすばらしい職人芸を持っている人が多いわけで、その点感心させられる。3、40年前の、斬新なネタではあるが完成度が低い映画と対照的で、完成度が低い映画はそもそも人に見せるものとしてどうよと思っている僕にとっては好ましい傾向ではある。だがそれにしても、ストーリーがあまりにチープなものが多いのも事実で、こういう予定調和的なものばかりになるのはつまらないとも思う。まあ、安心して見られると言えば言えるんだが。蒼井優、江口洋介が好演。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『食堂かたつむり(映画)』竹林軒出張所『しあわせのパン(映画)』竹林軒出張所『トイレット(映画)』竹林軒出張所『プール(映画)』竹林軒出張所『喋々喃々(本)』