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竹林軒出張所

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『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』(映画)

鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言
(2012年・『鬼に訊け』製作委員会)
監督:山崎佑次
出演:石橋蓮司(ナレーション)
ドキュメンタリー

『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』(映画)_b0189364_924447.jpg かつて「法隆寺の鬼」と呼ばれた宮大工、西岡常一(故人)へのインタビューをまとめたドキュメンタリー映画。
 僕自身は西岡常一の1ファンであるため、監督の山崎佑次が撮影した西岡常一のビデオをこれまで何本か見ている上、語られていることも他の本ですでに知っていることが多かったのでとりたてて目新しさを感じることはなかったが、この映画で初めて西岡常一に接する人がどういうふうに感じるのだろうかと考えながら見ていた。映画の印象としては全体的に言葉足らずというようなもので、もっと核心を突かんかいと言いたくなるようなもどかしさを少し感じたのだった。
『鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言』(映画)_b0189364_9271068.jpg 基本的には、西岡氏の晩年に何度か試みられたインタビューの映像をつなぎ、その間にいろいろなエピソードを挟むという手法で、子息の西岡太郎氏や薬師寺管主、若手の弟子などのインタビューも間に挟まれる。こうすることで西岡氏の人となりを紹介していくというアプローチである。ただやはり、全体的に何となく茫洋とした感じが残り、核心を突いているという印象からはほど遠い気がする。このあたりは、書籍の『宮大工西岡常一の遺言』(竹林軒出張所『宮大工西岡常一の遺言(本)』参照)と共通する(映画の内容もこの本とほとんど同じ)。それに西岡常一を間近で見続けていた直近の弟子である小川三夫のインタビューがなかったのももの足りなかった部分である。
 とは言え、生前の西岡氏の映像がふんだんに出てくる上、実際に部材を仕上げたり、建物(薬師寺の玄奘三蔵院)を組み上げたりする映像が出たりして興味深い映像も多い。それでも全体を通してあまりメリハリがなく、1時間半のドキュメンタリーとしては少々退屈だったのも確かである。死期に近付いて弱っていく西岡氏が少し痛ましくもあった。とにかくあまり良い印象のなかったドキュメンタリーで、少々物足りなさが残る映画であった。貴重な映像も紹介されているが、映像の記録的価値以外はあまり評価できない。
★★★

参考:
竹林軒出張所『宮大工西岡常一の遺言(本)』
竹林軒出張所『棟梁 技を伝え、人を育てる(本)』
竹林軒出張所『宮大工と歩く奈良の古寺(本)』
竹林軒出張所『よみがえる金色堂(映画)』
竹林軒出張所『桂離宮 よみがえる日本の美(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『五重塔はなぜ倒れないか(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『完全再現!黄金期のフランス古城(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2012-05-15 09:28 | 映画
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